バイクに乗ったコサックたち

プーチンが初めてセクストン・バイク・センターに行き、夜狼と会ったのは2009年のことだった=AP通信撮影

プーチンが初めてセクストン・バイク・センターに行き、夜狼と会ったのは2009年のことだった=AP通信撮影

風で荒れた顔、レザーとタバコの匂いやタイヤの轟音は、夜のモスクワの道路を独占する暴走族を思い起こすが、彼らは、西側の暴走族とはずい分肌合いが違い、バイクに乗ったコサックといったところがある。

元々は反体制、新西側的だった「夜狼」 

 ロシアの「夜狼」は、ジーパンと革ジャンを着て、ヒゲ面でビール腹の男達からなり、80年代の反ソ的なロックンロール文化から芽生えた。当時、彼らは自由の戦士のノリだった。

 長年にわたりロシアで唯一の暴走族であり、今では5000人以上のメンバーを抱える老舗「夜狼」は、ロシア最大の暴走族だ。

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ロシア式DIYでスノーバイク

 夜狼のマニフェストには、全ての法律を拒否する事と、メンバーの固い結束を守る事が書かれている。しかし、ロシアの夜狼は、そのアメリカ支部と違い、犯罪に手を染めて夜狼の名を汚してはいないとか。

 ロシアの支部は当初、ヘルズ・エンジェルスを真似て作られ、MC(モーターサイクル・クラブ)ではなく、MG(モーター・ギャング)と呼ばれた。

 

プーチン氏と交流する愛国者に 

 しかし、夜狼とロシア国外にある他の暴走族との違いは大きい。夜狼はイデオロギー的に体制に近く、ウラジーミル・プーチン大統領と交流があり、集団トップは愛国者として知られている。

 プーチンが初めてセクストン・バイク・センターに行き、夜狼と会ったのは2009年のことだった。疑い深い人は、これは、プーチンのマッチョなイメージを上げる為だけのものだと考えた。革ジャンを着て、体格のいいバイカーに囲まれたプーチンの写真は、首相時代、そして後の大統領時代にも、度々取り上げられた。

 今年7月には、プーチン氏は、刺青だらけの夜狼のリーダー、アレクサンドル・ザルドスタノフ氏と会っていたため、ウクライナのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領との会談に4時間も遅刻してしまった。

 2000年に大統領に就任して以来、プーチン氏は、愛国心とロシアの国の力を擁護し支持することをアピールしてきたが、夜狼も同様の信念を貫いてきた。

 

若者の模範としての暴走族 

A・ザルドスタノフ氏=タス通信撮影

 「夜狼は愛国的な集団であり、若者の模範となって祖国の力になりたい。ロシア人はジーパンを買い、チューインガムを噛み、マクドナルドを受け入れる事で祖国に背いてしまった」。こう「外科医」(ザルドスタノフ氏のニックネーム)は語る。

 「夜狼はただのモーターバイク・クラブではない。これは社会現象だ。 我々の所には大統領も来るし、総主教も我々を祝福する」

 彼は大統領と懇意にしていることを公にし、「ロシアの偉大さを回復しようとする」プーチン氏の愛国心をたたえる。

 ザルドスタノフ氏は、1942年8月23日のナチス・ドイツによるスターリングラード空爆の追悼イベントの一環として、スターリングラード愛国バイク・フェスティバルを企画した。彼は激しい反米主義と西側の価値の批判でも有名だ。

 

暴走族のコサック化 

 2012年2月、ロシアのフェミニスト・パンク・ロック集団であるプッシー・ライオットが救世主ハリストス大聖堂で「パンク祈禱」を捧げて物議を醸し出し た際、夜狼は非常に憤慨し、ロシア正教会に強い支持を示した。これは典型的な、反体制的ロックンロールの理想とはかけ離れた行動だった。夜狼は、今後このような「不良行為」からロシア正教会を守ることを約束した。夜狼は公然と同性愛者を差別し、同性愛者の入会を拒否している。

 バイク乗りのなかには――主に、高価なバイクを買うことができるような中年の男性たちだが――夜狼のこのような言動にやや驚き、特に最近の政府支持のスタンスには眉をひそめる者もいる。

 夜狼のメンバーの一人、フェリックス氏によると、入会を希望するバイカーは、最低5年間クラブに所属しなければ正規のメンバーとしては認められない。

 

勲章をもらった夜狼 

 2013年にプーチン氏は「外科医」に、「若者の愛国心教育への積極的な貢献」と第二次世界大戦の兵士の遺骨収集への貢献をたたえ、勲章を授与した。

 去年、夜狼はライバル暴走族との争いで、メンバーが一人射殺されるという事件を起こしたが、誰も逮捕される事はなかった。争いの種は、ライバル暴走族が夜狼のクレムリン支持を是認しなかったことだ。

 この事件に関わった「スリー・ローズ(Three Roads)」暴走族のリーダー、エフゲニー・ヴォロビヨフ氏によると、「スリー・ローズ」が夜狼との同盟関係を断ち、最近ロシアに登場したが目立たないアメリカのバンディドスMCに乗り換えたため、夜狼が腹を立てたという。

 「我々は、夜狼の表立った活動がどうしても好きじゃなかった。政治的な事が多すぎて。なんせ俺たちの理想は音楽にバイク、自由な時間と女性。夜狼は政治的になりすぎたよ」。ヴォロビヨフ氏はこう説明した。