モスクワ市中心部のクレムリンに近接する「ロシア」ホテル跡地に、「ザリャジエ(Zaryad'e)」公園が建設される=Press photo撮影
複数の擬似エコシステムもつ自然公園
優勝者の主なアイデアは、自然のある都市計画。決められた遊歩コースはなく、植物は園内で自由に育つ。ロシアの特徴的なツンドラ、森林、ステップ、沼地、また氷穴といったさまざまな自然ゾーンもある。モスクワ川の河岸通りは花と緑の並木道に変わり、模造自然ゾーン(都市部の限られた条件で植物や動物のある沼といった本物のエコシステムをつくるのは不可能)は、川に向ってテラス式に下る。互いに交差しながら重なって、公園の施設を縁取る。また園内の特別 な技術は、人工的な微気候を維持する。
ガラスの円形劇場は、特別な暖房システムと緑化技術で季節を演出する「気候アトラクション」ゾーンと、フィルハーモニーを覆う。1年中利用することが可能で(これがコンペの1条件)、冬でも快適な気温が保たれる区画もある。
かつてモスクワに存在したザリャジエ地区は12世紀、モスクワ川の河岸の商業地として誕生。16世紀には現代で言うところの高級住宅街となり、その後ユダヤ人のゲットーとなった。20世紀にスターリン様式の高層建築物の建設が計画されたが、スターリンが死去したため、「余剰建築物」のプロジェクトに 変わってしまう。1960年代半ばに、当時としては世界最大の「ロシア」ホテルが建設された。2007年に解体され、以降クレムリンに近接する、モスクワでもっとも高価な空地となっていた。2012年に公園の建設が決定された。
総工費150~300億円は全額市の予算で
ロシアの特徴的なツンドラ、森林、ステップ、沼地、また氷穴といったさまざまな自然ゾーンもある=Press photo撮影
コンペの主催者は、発表されたプロジェクトが、公園設計の技術条件の基礎となるコンセプトにすぎないことを強調した。モスクワ市指定建築士で、今回のコンペの審査員長を務めたセルゲイ・クズネツォフ氏によると、「ロシア」ホテルの骨組みは解体が必要で、また河岸通りには他に展望台もつくられるという。優勝者は、公園脇のモスクワ川大橋の車線を4車線に減らし、一部歩行者用道路にすることを提案している。
クズネツォフ氏は総工費を100億ルーブル(約300億円)と試算しているが、マラト・フスヌリン副市長は50~65億ルーブル(約150~195億 円)と、2分の1ほどの数字をはじきだしながら、あくまでも見積額であることを強調している。コンペの参加者も、1億7100万~2億3000万ドル(約 171~230億円)と、これに近い見積額を示している。フスヌリン副市長によると、プロジェクトの全額が市の予算でまかなわれ、投資家のサービスは受けないことが決まっているという。「投資家は商業区画を要求するだろうから」と理由を説明しながら、2~3年で建設が完了する見込みであることを明らかにした。
ロシアの建築事務所が担当か
公園脇のモスクワ川大橋の車線を4車線に減らし、一部歩行者用道路にすることを提案している=Press photo撮影
2014年に起工し、2018年までに完工する予定。都市計画専門家は近々、設計士のための技術条件の作成を始める。プロジェクトの専門家グループには、クズネツォフ氏を始めとするコンペの審査員が参加する。「建築事務所はコンペで近々選出されるが、恐らくロシアの会社になるだろう。コンセプト・コンペで優勝したチームが設計責任者にならなければいけないという法律はロシアにはないが、ディラー・スコフィディオ+レンフロがこのプロジェクトの実現に参加することは間違いない」とクズネツォフ氏。
コンペの参加者は、経済的な部分も提案した。公園は部分的であっても、そのコストを償う必要がある。「モスクワ動物園の方法を選ぶかもしれない。どこかのスポンサーが木や石を管理するなど。試算によると、公園の費用の50%までの元は取れる」とクズネツォフ氏。
モスクワ市建設・都市計画委員会が今回のコンペについて発表したのは4月で、27ヶ国から87件の応募があった。プロジェクトのコンサルタントは、「ストレルカ」メディア・建築・デザイン大学。
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