40頭以上の白クマが村にやってきた

チュクチ自治管区のルィルカイピイ村周辺に、40頭以上の白クマが集まり、村民を困らせている=ミハイル・デミノフ撮影 / WWF

チュクチ自治管区のルィルカイピイ村周辺に、40頭以上の白クマが集まり、村民を困らせている=ミハイル・デミノフ撮影 / WWF

チュクチ自治管区のルィルカイピイ村周辺に、40頭以上の白クマが集まり、村民を困らせている。海岸のクジラの死骸がおびき寄せたもの。「クマ・パトロール」(世界自然保護基金のグループ)やボランティアは、このレッド・データ・ブックに記載されている希少動物を村民に近づけないよう、努力している。

 白クマがチュクチ自治管区に襲来している。世界自然保護基金(WWF)の関係者によると、ここでは通常、小さな動物の群れしか見られないという。例えば、海洋哺乳類審議会がチュクチ自治管区の海岸を数週間調査した時は、バラバラに行動している15頭の動物を見ただけだった。

 最初に20頭ほどの白クマの群れが現れたのは、11月3日、ビリングス村近くの海岸にて。「朝家から出たら、白クマがいた。じっと見つめたら、向こうが私を見つめ返してきたから、知らんぷりして出かけた。次の日の朝見たら、また白クマがいた・・・」と目撃者。

 その後WWFの観察者は、ビリングス村から「白クマがたくさんいる!オスも子どもを連れたママもいる」といった驚きのメッセージを次々に書いた。調査の結果、白クマが夏に過ごした大きな氷塊と、チュクチ自治管区の海岸の間に、氷の橋ができていたことが明らかとなった。「クマ・パトロール」プロジェクトの責任者であるヴィクトル・ニキフォロフさんはこう話す。「この海岸にエサがあるという白クマの歴史的記憶が機能して、移動してきた。確かにこの時、コククジラ15頭の死骸が海岸にあった。クジラにとっては災難だったが、白クマはエサが見つかって良かったと」。

 白クマはここでクジラをすっかりたいらげると、集団(この時すでに30頭以上)で数日間かけて海岸を200キロメートル南東方向に移動し、11月6日にルィルカイピイ村近くに来た。

 ルィルカイピイ村は海岸部に位置しているから、白クマは遅かれ早かれいつか訪れていただろう。村から2~5キロメートルほどの海岸に、クジラ2頭とセイウチ複数頭の死骸があったため、村には直接来なかった。エサが見つかったことで白クマはここにとどまってしまい、仲間まで増やしてしまった。タチヤナ・ミネンコさんが統率する「クマ・パトロール」の観察者は11月7日夜、海岸で43頭確認。

 ミネンコさんはその後モスクワに、ルィルカイピイ村のはずれに現れ始めたと連絡。村の住宅近くのゴミ収集場に来る可能性もあると警戒した。パトロール隊は雪上の白クマの跡を調べながら、村の周辺を1日に何度もパトロールし、行政や企業の幹部には白クマを決して撃たないよう周知し、住民には遭遇した時の対処法を教えた。

 「白クマが現れると、必ず喜んで見に行く人がいる。特に子供たち」とニキフォロフさん。

「クマ・パトロール」プロジェクトの参加者達=ミハイル・デミノフ撮影 / WWF

 「パトロールは朝から学校周辺に待機し、1日2回村周辺をまわって管理している」とミネンコさん。

 「パトロール隊にはスノモービルやガソリン、また近づいてきた時に脅かすための信号拳銃を与えている。人間の怖さをよく知らない若い白クマは人に近づいてくるし、あとゴミ収集場の臭いにもおびき寄せられてくる。スノーモービルを白クマの方に向けると驚いて、数キロほど先まで逃がすことができる。人は村に、動物は自然にと、接触がないことが一番重要。白クマが玄関に入ってくるようなことがあってはならない」とニキフォロフさんは説明する。

 これほどの数の白クマを長期間管理するのは難しいが、11月1日に南風が吹いたため、一部が移動した。「それでもまだクジラのまわりにたくさん白クマがいる」とニキフォロフさん。

 ルィルカイピイ村では現在、夜間外出禁止令が出ている。

 WWFによると、チュクチ自治管区の1ヶ所に白クマがこのように集まることはとても珍しく、最後に海岸で確認されたのは2006年のことだという。「白クマが増えているからこのようなことが起こったわけではない。軟氷によって北極圏には2万5000頭しか残っていない」とニキフォロフさん。村から白クマが離れ、緊張状態から解かれることを願っている。