写真提供:Press Photo
別荘の評価額は現時点で、1800万スイス・フラン(18億円)強。湖岸の10ヘクタールの敷地に建物2棟と桟橋がある。ラフマニノフの親戚が初めて屋敷の売却の意思を示し、さらにロシアの購入者を望んでいるというのだから、これほどの機会はない。
ラフマニノフ財団の創設者で理事長を務める、孫のアレクサンドル・ラフマニノフさんが最後の所有者だった。アレクサンドルさんはすでに亡くなっている が、遺言書には祖父の別荘と調度品、文書、ピアノ、私物の所有権を財団に移すよう記されている。財団の現理事はアレクサンドルさんの夫人のナタリヤさん。
「売却して財団の活動資金に」
「ロシアに別荘、すべての財産、文書を売却しようと考えたのは私。受け取った金額の半分を子供に渡し、残りを財団の資金にする。これで夫が始めた財団の活動を続けることができる。個人的にロシア大統領に連絡を取り、財団の弁護士はロシア大使館と接触している」とナタリヤさんは話す。
購入の決定が早ければ早いほど、セルゲイ・ラフマニノフの遺産を完全な形で残せる可能性が高い。実現すればロシアが固有の博物館を所有することができる。
ナタリヤさんはこう話す。「ロシアのグリンカ音楽文化博物館の専門家が、手紙、本、私物を含めた別荘の博物館としての価値を試算。その結果、ロシアだけでなく、世界でも歴史的、音楽的な価値があると証明された」。
「ロシアの作曲家であることをアピールするため」
メジンスキー文化相は、スイスの別荘の購入が、国のために重要だと考えている。西側諸国ではしばしば、セルゲイ・ラフマニノフがアメリカの作曲家である と言われているからだ。「ラフマニノフがずっとロシア人であった、またそうあり続けることは我々にとって重要。本人はいつもロシア語を話していた。戦後はロシアに帰国することを夢見いていたし、戦中はコンサートで得た報奨金を赤軍基金に送金していた。それでもアメリカの作曲家にしようとする人々がいることは、残念であり、間違いであり、偉大なるロシアの作曲家に対して申し訳ない。だから、ロシアが別荘を購入することはとても重要だ」。
また別荘が博物館になることの特別な価値も強調した。「場所柄ここが特別というだけでなく、日記、楽譜、手紙、服、家具、そして本人が作曲し、ひいていたピアノといったラフマニノフの所有物がたくさん保管されている。その上、建物を設計したのも本人。別荘はそっくりそのまま残っている、ラフマニノフの人生の一部」。
「いろんなイベントで資金はすぐに回収できる」
別荘の購入は損失にはならないという。ピアニストのアンドレイ・ガヴリロフ氏はこう話す。「資金は回収できるし、大きな利益もついてくる。マスター・クラス(教室)、コンサート、録音、セミナー、また世界中から訪れる観光客など、いかなる額でもすぐに回収できるはず」。
「セナル」と呼ばれるこの別荘は、スイスのヘルテンシュタイン村に位置するルツェルン湖岸にある。ラフマニノフは1930年にこの土地を購入し、翌年に2階建ての建物の建設、庭の造成、桟橋の設置などを行った。ラフマニノフの家族は1934までにセナルに引っ越し、アメリカに行く第二次世界大戦開始時まで、ここで生活を続けていた。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。