可愛くて不気味なロボットの心

アレクサンドル・セルバーク撮影/コメルサント紙

アレクサンドル・セルバーク撮影/コメルサント紙

日本文化フェスティバル「日本の秋2013」が、「ドラマ芸術学校」、 マネージ・ホールで、アンドロイド版『三人姉妹』の上演で開幕した。 アンドロイドと人間が共演する初めての試みで世界に衝撃を与えた劇団「青年団」、大阪大学、ATR石黒浩特別研究室による「ロボット演劇プロジェクト」の作品だ。原作は、アントン・チェーホフの戯曲『三人姉妹』。

 「日本の秋」は、在ロシア日本大使館、ジャパンビジネスクラブ、日本センターの主催で、毎年、日本文化を紹介するために開催されるが、今年は、オープニング・イベントでいきなりモスクワっ子の度肝を抜くことなった。

 日本人は、他の国が考え出した最良の事物に、何か自分のものを融合させるのが好きだ。チェーホフも大のお気に入り。

 劇作家で劇団「青年団」を主宰する平田オリザ氏は、単に『三人姉妹』を上演するだけでなく、それを今の現実に適合させた。舞台は、日本の地方都市に移され、軍人は学者に置き換えられた。プロゾロフ家の三姉妹は、生涯をロボット製作に捧げた、今は亡き学者の娘という設定だ。同家にやって来る客たちも、軍人ではなく学者である。

 チェーホフの原作のセリフも、ことごとく改変された(もっともそれと分かるモチーフはある――例えば街の火事だ)。早い話、“アンドロイド版”と原作の間に、直接的なアナロジーは求めないほうがいい。

 

三女イリーナはアンドロイド 

 とはいえ、三姉妹はやはり登場する。長女は学校教師で、次女は学者と不幸な結婚生活を送っており、三女はただもう不幸せなのだが、この舞台で一番面白いのは、まさにこの三女なのだ。

 というのは、現代の客間を表しているパビリオンに、やおら三女が登場する場面で、実際に舞台に現れるのは、人間ではなく、車椅子に座ったアンドロイドだからだ。

 平田氏は、ロボット工学者の石黒浩・大阪大学教授と緊密に協力している。石黒氏は、人間そっくりのロボット「ジェミノイド」の製作で、世界的に知られる。今回のアンドロイド版『三人姉妹』も、二人の協力の一環として生み出された。

 「私たちは、アンドロイドが“演ずる”新しい劇場を立ち上げることができました。時には人間より魅力的ですよ」と石黒氏は胸を張る。

 その魅力について云々するのは難しいが、この“人間もどき”が、合成された声でしゃべりだしたときは、観客たちは口をあんぐり開けていた(このロボットが、自分の性格らしきものを現すのは、もっぱらこの声を通じてのみだ)。

 

実は死んでいた・・・ 

 もう一つ仰天させられたのは、実は、この三女はとっくに死んでいたという設定だ。亡き父が、娘と寸分違わぬコピーを作り、それがずっと家族と暮しているという次第。

 さて、このアンドロイドの傍には、これに比べると影が薄いが、もう一つ、人間の叡智の落とし子が控えており、芝居に加わっている。それは“召使ロボット”で、原作のフェラポントとアンフィーサに代わる存在だ。

 この歩くキャビネットは、自分で料理もできれば、店に買い物にも行き、自分と同類のロボットと会うと、おしゃべりを始める。

 ちなみに日本では、人間の形をしたこの種のロボットが、3年前から販売されており、病人の看護などに役立つことを期待されている。

 要するに、この舞台で面白いのは、原作の解釈などではなく、現代世界におけるコンピュータと人間の関係なのだ。

 とはいえ、芝居は芝居だ。アンドロイドがいようがいまいが、そして、たとえロボット時代であれ何であれ、人間の日々の暮らしと家庭の秘密は、やはり興味をそそる。

 

「気をつけないと、あなたもアンドロイドにされちゃいますよ」 

 芝居がはねると、筆者は楽屋に行き、アンドロイドに会わせてもらった。確かに面白いが、不気味でもある――将来の演劇も自分自身も、そして文明も。

 この日本のイリーナ嬢は、筆者をじっと見つめ、まばたきし、まぶたを震わせながら、口元をほころばせ、微笑した。

 多分、この芝居の最も重要なセリフは、「気をつけないと、あなたもアンドロイドにされちゃいますよ」という警告だ。これは、芝居の後も、筆者の脳裏にこびりついていた。

 

*元記事(露語)