ジュリ ア・ロバーツ、ロント国際映画祭=AP通信撮影
ロシア風ジュリア・ロバーツ
先に行われたトロント国際映画祭で、映画評論家とファッション専門家を驚きが待っていた。パンツスーツとブラックの色味を好むことで有名な女優のジュリ ア・ロバーツは、映画「8月:オセージ郡」のプレミアに、ドルチェ&ガッバーナの赤いワンピースを着てさっそうと登場。ワンピースのスタイル、 レース、そして真ん中わけのヘアスタイルは、ジュリアをハリウッド・スターから本物のロシア美女に変えてしまった。
世界のスターがここ数年、ロシア・スタイルに多大なる関心を示しているのは、不思議な現象だが、事実である。ロシア・スタイルの特徴は、フェミニンなシ ルエット、ふっくらとしたスカート(長さはマキシ)、強調されたウエストライン、毛皮の帽子(「ドクトル・ジバゴ」風)、三角巾、フローラル・プリント、 レース、刺しゅう。パヴロフスキー・ポサドのスカーフ(ウール製で大きく、鮮やかなフローラル・パターンとフリンジがついている)、ホフロマ模様(ブラック、レッド、ゴールドの色調を厳格に守った植物の絵)といった、ロシアの民俗芸術の要素もとりいれられている。
ガガ様もロシアン
レディー・ガガは昨年、ロシアのデザイナーで、西側諸国ではロシア・スタイルのグルとなっているウリヤナ・セルギエンコのコレクションの一部を着て、公の場に姿を現わし、多くの人を驚かせた。
レディー・ガガ=Getty Images/Fotobank撮影
セルギエンコ自身は「ウリヤナ・セルギエンコ(Ulyana Sergeenko)」ブランドの創設者で、ニューヨーク、パリ、ミラノ、モスクワのファッション・ショーの常連参加者。セルギエンコがボリュームのある長いスカート、スカーフ、ヒールといういでたちでしばしば強い印象を与えていることから、リアル・クローズとしてのロシア・スタイルが世界で確立されたのかも しれない。
ウリヤナ・セルギエンコの2013-14秋冬=Photoshot / Vostock-Photo撮影
関心の起伏
西側におけるロシア文化とロシア・ファッションへの関心は、歴史的に上下しているが、長期に渡って消えることはない。王位継承、戦争、革命、ペレストロイカといった大変動がロシアで起こるたびに、新たなブームが訪れる。
18世紀にヨーロッパの人々を刺激したのはロシアの改革者ピョートル大帝、次に1814年のパリ入城でコサックとロシア軍のユサール連隊、さらに19世紀末から20世紀初頭にかけて皇族も参加したロシア貴族の「仮装舞踏会」だ。
ロシアへの関心が再び高まったのは、フランスで初めてディアギレフの「バレエ・リュス」の公演が行われた1909年。アヴァンギャルドな雑誌「芸術世界」を中心とした芸術家集団、すなわちレオン・バクスト、イヴァン・ビリビン、アレクサンドル・ベノワ、ニコライ・リョーリフ(レーリヒ)らが、「ボリス・ゴドゥノフ」、「春の 祭典」、「火の鳥」、その他のロシアをテーマとした演劇をデザインして、大きな成功を収めた。
ドルチェ&ガッバーナの2013春夏=Photoshot / Vostock-Photo撮影
バレエ・リュス、亡命者の波、イヴ・サンローラン・・・
有名なフランスのデザイナーであるポール・ポワレは1911年、ロシアから帰国した後、ウクライナの刺しゅうとコサックのブーツをパリのファッションに 持ち込んだ。ロシア革命後にロシア帝国からの亡命者がフランス、ドイツ、アメリカ、イギリス、その他の国に流入すると、あらゆるものにロシアの影響が見られるようになった。
ボヤルスキー襟、伝統的なスラブ・デザイン、北方のココーシニク、タッセル付きのショール、その他さまざまなロシア独自の要素が、ヨーロッパのファッションに根付いた。
20世紀後半には、イヴ・サンローランがロシアの衣装に関心を持ち、ロシア・コレクションを発表。毛皮の帽子、ブーツ、何層ものスカート、刺しゅうがほどこされたブラウスなどを用いて、贅沢で個性的なファッションに仕上げた。
フェミニンな魅力
だが本格的なロシア・ブームが始まったのは2000年代半ば。ロベルト・カヴァリのコレクション、シャネルのカール・ラガーフェルドによる「パリ・モス クワ」、ケンゾーのアントニオ・マラスによる「ロシア・ライン」、ジョン・ガリアーノのコレクション、ヴァレンティノ、ドルチェ&ガッバーナなど がそれだ。
たくさんの植物のオーナメント、さまざまな「おばあちゃんのスカーフ」、手工刺しゅう、レース、毛皮の襟や帽子、ウエストが強調されたふっくらとしたス カート、ハイカラ、大きくてがっしりとしたネックレスやイヤリングなど、これらすべてが今やロシア・スタイルの代表的要素だ。
ウリヤナ・セルギエンコのオートクチュールショー、パリ、2012年=Getty Images/Fotobank撮影
ロシア風ファッションは、贅沢なエレガントさによって極めてフェミニンで魅力的になっている。世界のファッション界でここ数年主流となっているミニマリ ズムとアンドロジニーを背景にすると、特に目立つ。女性はいつも女性らしくありたいのだ。それはつまり、ロシア風ファッションの流行のともしびが消えてなくならないことを意味する。
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