=ルスラン・スフシン
ユニークな皇族たちの横顔
キュレーターを務めるエヴゲニー・ルキヤノフさんによれば、ピョートル一世、エカテリーナ女帝、ニコライ二世といったよく知られた君主のほかにも、皇室にはユニークな人物がいたことを示すのが、主な狙い。
たとえば、自ら石とガラスを彫って自分の家族の肖像を制作した(それらは特別の展示ケースに収められている)パーヴェル一世の皇后であるマリヤ・フョードロヴナ大公妃や、エルミタージュ劇場でその役を演じることを皇帝に許されたハムレットの姿で1899年の彩色写真に映っている俳優、詩人、翻訳家のコンスタンチン・コンスタンチーノヴィチ大公など…。
歴史面でも芸術面でも充実
また、数奇な運命をたどった人物もいる。たとえば、アンナ・パーヴロヴナ大公女。夫君のオラニエ公と手を取り合って恭しく足を運ぶ様子が、西欧の画家の版画に描かれている。オランダの王妃となったこのロシアの大公女は、国民にこよなく愛されたため、オランダには、アナ・パウローナと名づけられた町もある。
この展覧会は、歴史的な要素ばかりでなく、芸術的な内容でも充実している。
時系列に沿って配置された展示では、ミハイル・フョードロヴィチやアレクセイ・ミハイロヴィチといった皇帝が描かれた1670年代から1680年代にかけての初期の肖像画から革命前の写真にいたるまでのロシアの肖像芸術の歴史が一望できる。
大画家にもドル箱
作者のなかには、大芸術家もいる。たとえば、正装のニコライ二世を描いたイリヤ・レーピン、アレクサンドラ・フョードロヴナの大理石の胸像を制作したマルク・アントコリスキー、自作の肖像画にもとづいてアレクサンドル・アレクサンドロヴィチ皇太子(のちのアレクサンドル三世)の描かれた銅版画を制作したイワン・クラムスコイ…。クラムスコイは、自分の版画を「紙幣」と呼んでいた。様々な時代の君主たちが描かれた版画は、人気があるので大量に印刷され、画家たちの大きな収入源となっていた。
まさに歴史の一コマ
宮廷画家ミハイ・ジチの水彩画には、ドミトリー・カラコーゾフによる皇帝暗殺未遂事件のちょうど翌日にあたる1866年4月5日の冬宮でのレセプションの模様が描かれている。その時からロシアではテロの時代が始まるが、保存されたこの絵のなかで、皇帝アレクサンドル二世は、九死に一生を得た自分の無事を寿ぐ祝辞を受けている。
次の展示室には、小さな白黒写真がある。そのアレクサンドル二世が、幼い息子を膝にのせており、皇帝の足もとでは、ミロルドという名の愛犬が腰をおろしている。この犬はとても主人になついており、主人が1867年のパリ万博へ旅立つと、別れのつらさに耐えかねて、息絶えてしまったという。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。