冷製前菜の傑作:煮こごり料理

写真提供:StockFood/Fotodom

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歴史

  煮こごり料理というのは、冷たい濃いブイヨンに浸した肉か魚の料理。ロシアに煮こごり料理が現れたのは19世紀初め、フランス料理の影響だった。

  しかし、外国の料理人が現れるよりずっと前から、ロシアではこうした冷製の前菜が調理されていた。名門の家々ではお客を招いた翌日、豪華な食卓の料理の残り物を細かく刻み、ブイヨンと混ぜ合わせて、寒気にさらした。料理は「煮こごり」と名づけられ、召使い用に使われた。煮こごりはいつも事実上、廃棄部分 (たとえば、豚や牛の足、尻尾、耳など)で調理され、それらを長時間煮込むと、ブイヨンがゼリー状になった。

 ピョートル1世が流行らせたとされる外国人料理人の招へいは、ロシアに多くのフランス料理をもたらし、18世紀から19世紀にかけて高揚した西欧文化の流 行とともに、裕福な人はみな、召使いのスタッフにフランス人料理人を加えていた。

 フランス人料理人は、伝統的なロシア料理の多くに改良を加えた。彼らは煮こごり料理の食材領域を広げ、ゼラチン抽出の技法をマスターした。煮こごり料理には、透明な汁(つゆ)と、ゼリーをつくる層が必要だった。その前菜に、肉 や魚の上等な部位だけが選ばれるようになった。

 食材の草類、香辛料、根菜、野菜、茸などが、それぞれの色や風味を添えた。祭日の煮こごり前菜は長時間かけて調理され、魚、ゆで卵、レモン、野菜を特別な 形に切り刻み、鍋に入れた。ロシアでは最初、煮こごりは魚だけでなく、野鳥や肉や鶏肉でも調理していた。しかし、魚の煮こごりだけが「添えられ」るようになり、それがロシア固有の冷製前菜料理になった。

 しかし煮こごり魚料理の味は独特で、誰でもこれが好きというわけではない。2005年に米国のオバマ大統領がロシアのサラトフ市を訪問したとき、煮こごり魚でもてなされたが、オバマ氏の口には合わなかった。 大統領の言葉によれば、煮こごり魚はオバマ大統領を「深い不安」に陥れたという。

 

調理法

 

材料

  • スズキ―1.5~2キロ
  • ニンジン(中くらいのもの)―2個
  • タマネギ―2個
  • セロリの葉―50グラム
  • 月桂樹の葉―2枚
  • 黒コショウ(粒)―8~10粒
  • 黒コショウ(粉)―5グラム
  • 塩―20グラム
  • 粉ゼラチン―40~50グラム
  • ウズラの卵―10個
  • 香草―パセリ、フェンネル
  • レモン―1個

  前菜は前もって用意し、冷蔵庫に7日くらい寝かせる。煮こごりは一人前ずつ、サラダ鉢に注ぎ分ける。料理は同じこの器で食卓に出してもよい。

  調理には、主にスズキ、鯉、カマスなど、いろいろな種類の川魚を使う。一番のお薦めは、カロリーの低い魚であるスズキの煮こごり。スズキの切り身100グ ラムは80キロカロリー以下だ。この川魚の白身にはタンパク質(18%)とビタミンが豊富に含まれている。スズキには20種類のアミノ酸すべてがあり、その8種類は人体組織では合成されない。

  新鮮な魚を選び、ウロコを取り、えらと内臓を取りのぞく。同じ大きさに切り分け、頭と尾ひれを切り離し、骨を取る。頭と尾ひれを冷水に入れ、火にかけ、煮 立たせる。そのあと灰汁(あく)を取り、ニンジン、ネギ、パセリ、フェンネルを入れ、粒状の黒コショウ、月桂樹の葉、塩を加える。ときどき灰汁を取りなが ら、15分煮続ける。

 煮汁から頭と尾ひれを取り除き、ウロコを取った魚の切り身を煮汁に入れ、出来上がるまで弱火で煮る。そのあと網杓子で慎重にブイヨンから魚を引き出し、大皿か型に入れる。ブイヨンを2~3枚のガーゼで濾す。

 

アドバイス: 

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新年の食卓です

 ブイヨンは、強火で煮立たせないこと。強火で煮ると濁りが出て、色が黒ずむことがある。ブイヨンが煮終わる頃に、氷をひとかけら入れて煮上げると、ブイヨンが透明になる。

 新鮮な食用ゼラチン50グラムを、コップ一杯の湯に入れ、ガーゼで濾したブイヨンと混ぜ、煮立つ直前まで加熱し(しかし煮立たせないこと)、魚の切り身にかける。星形に切ったゆでニンジン、グリーンピース、青パセリ、輪切りにしたゆで卵で彩りを添え、ブイヨンをかけて冷蔵庫に入れて冷ます。彩りに輪切りレ モンを使ってもよいが、ブイヨンが冷めてからにすること。冷めてからでないと、ゼリーが苦くなる。普通、煮こごり魚には、生野菜、ピクルス、新鮮なキュウ リ、ワサビや酢を入れたソース、香草を刻みこんだマヨネーズ、オリーブの実などを添える。

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