ソ連のラブコメ「運命の皮肉、あるいはいい湯を」が映画館で放映

写真提供:kinopoisk.ru

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1976年の今日、8月16日に、ソ連の恋愛コメディーの傑作「運命の皮肉、あるいはいい湯を」が映画館で上映された。ロシア人は、毎年大晦日に必ず放送されるこの映画を見ないと年が越せない。 最初はテレビ映画として同年1月1日に放映された。監督はエリダル・リャザーノフ。

なさそうであり得る話 

 大晦日の夜、モスクワの独身男性4人組は、毎年サウナで年を越す習慣。外科医のジェーニャが恋人と結婚するというので乾杯すると、下戸のジェーニャは酔いつぶれ、うっかりレニングラード行きの飛行機に乗せられてしまう。

 レニングラードについても酔いの醒めないジェーニャは、タクシーをつかまえて、自分の住所を告げると、着いた場所は、ジェーニャのアパートとまったく同じ外観、間取りで、なんと鍵まで同じだった。

 (ソ連時代は、どの街にもレーニン通りやマルクス通りがあり、フルシチョフカと呼ばれる同じ規格のアパートがあり、鍵の種類も限られていたので、まんざらあり得ない話でもない。リャザーノフ監督がインタビューで語っていたように、画一的な建築に対する皮肉も、この映画には込められている)。

 自宅のつもりでぐっすり寝入ったジェーニャだが、そこは実は、34歳の美しいロシア語教師ナージャのアパートだった。やがて、外出先から戻ってきたナージャは仰天し、まだ酔っ払っているジェーニャと口論になる。

 そこへ、ナージャの婚約者イッポリトがやって来る。彼は、高価な香水をナージャにプレゼントしたり、新車を乗り回したりしているところからみて、かなりのエリート(党の官僚?)で、傲慢でひとりよがりなところがある。その彼は、ジェーニャを見つけて、新しい彼氏だと勘違いして怒りくるい、すったもんだの挙句、ナージャに別れを告げてしまう・・・。

 

大人の深い恋愛映画 

 筋は一見ドタバタだが、しっとりした大人の深い恋愛映画でもある。長回しが多く、微妙なセリフのやりとりで、登場人物の心が揺れ動き、ジェーニャとナージャが次第に惹かれ合っていくのが、手にとるようにわかる。展開の速さだけで見せるラブコメにはない魅力だ。

 名優ユーリー・ヤコヴレフ演じるイッポリトも、単なる敵役に終わっていない。たとえば、絶望したイッポリトが泥酔し、毛皮外套を着たままシャワーを浴びる場面がある。この場面は、もともとは喜劇的効果をねらったものに過ぎなかったが、イッポリトの絶望だけでなく、彼の人生の悲劇も垣間見せる凄みのあるシーンとなった。

 

新しい年に夢を託す

 ロシア人は、大晦日に起こるこのストーリーを見て、笑ったりしゅんとなったりして、新年に夢を託す。

 最近、続編が製作されている。