市場でまず選ぶのは、食品ではなく、肉屋、八百屋、牛乳屋など、それを売る人たちなのだから。=ロイター通信撮影
ロシアの市場はいろいろな民族が集まる場所だ。外国人にとって市場は、まず第一に、旧ソ連のさまざまな伝統料理が一堂に集まるところ。ここではそれぞれの民族が民族の特質を見せ、最高の塩漬け商品は、ロシア中央部の州のロシア人の店で見つけることができる。ベリー類や森のキノコも、採れたてのもの、樽詰のものなど、さまざまある。ボロネジ州、リペツク州、ロストフ州、クバンの住民は、立派な脂身(サーロ)や胸肉、ソーセージや腿肉を売り台に並べる。母乳育ちの子豚、子牛肉、豚肉が見つかるのも、これらの店だ。
またダゲスタンやカルムィクの商人のところでは、味の良い羊肉や馬肉を見つけることができる。生きのよい野菜やコーカサス地方のチーズ、「トケマリ」、「アッジカ」、「サツベリ」など、民族色豊かなソースが見つかるのはグルジア人の店。アゼルバイジャ ン人は、見事な柘榴(ざくろ)、柿、無花果(いちじく)、ブドウを自慢し、ウズベク人やタジク人は、いろいろなドライ・フルーツや香辛料、ピラフやドルマ の食材に使う米を売ってくれる。
だから、もしロシアとロシア近隣の外国を知り、各地の料理の地理的特徴と必要な食材を知りたければ、ぜひ市場へどうぞ。市場に来れば、食材に触れ、匂いを嗅ぎ、試食し、値切って買うこともできる。
まずは休日の定期市から
市場体験の最初は、休日の定期市から始めるのが一番だ。これは地下鉄駅の近くで休日毎にやっている街頭の露店。ヨーロッパや米国のファーマーズ・マーケッ トに似ている。小型トラックで直接に売り買いされる。ここは大きな常設市場よりも品数は少ないが、肉、卵、魚、チーズ、ソーセージ、野菜、果物など、かなりの品が揃っている。実際に農家の人たちもやってくる。たとえば、養蜂業者や、ソーセージ、脂身、燻製肉、塩魚、燻製魚、干魚などの生産者たち。 地下鉄「プロスペクト・ミーラ(平和大通り)」駅とスポーツ・スタジアム「オリンピースキー」の間に開かれる休日定期市は、とくにすぐれた定期市の一つ だ。
常設市場
常設市場の売り場は、休日定期市よりも多彩だ。たとえば地下鉄の「バグラチオノフスカヤ」駅、「メドベドコボ」駅、「テキステリシチキ」駅、「チョープル イ・スタン」駅などの近くにある市場を覗いてみるとよい。市場にずらりと並ぶマーケットは、いくつもの小さな店に分かれた屋台街で、東洋風の市場を思わせる。カイロかどこかの市場と同じように、ここはとくに清潔ではなく、スリも見かける。だから、基本的な警戒心を忘れてはならない。
以前、こんな市場に食品を買いに来るのは、それほど裕福ではないモスクワ市民だった。ここでの品選びには注意が必要だ。たとえば肉にしても、すべて見映え が良いように並べられている。さらに目利きの客でも欠点に気づかないように、ラップに包んで売られている。ガラス越しの野菜や果物は美しく見えるが、秤に置くのは売り台の下にある品物。ここでは値切り交渉は難しく、商品を手で触って、鮮度を確かめることはできない。その代わり、もし商品が陳列棚の中でなく、売り台に直接並べられているときは、よい品を選ぶことができる。ここへはしばしばモスクワ郊外の農家の人たちが農産物を売りにやってくる。
昔からある大規模な屋内市場
そして最後は、ダニロフスキー市場、ザモスクボレツキー市場、チェリョームシキンスキー市場、リシスキー市場、ドロゴミーロフスキー市場など、昔からある大規模な屋内市場だ。
たとえばドロゴミーロフスキー市場には、モスクワのすぐれたレストランが食材の買い付けにやってくる。ここにはどんな料理に使われる食材でも、ありとあらゆる食品が豊富に揃っている。もっとも、品物の価格は、チェーン店のスーパーマーケットよりも少々高めだ。しかし品質の良さ、豊富な品数、他のどこの店にもない多彩さは、価格の高さを補って余りある。ここには食卓に必要なすべてのものがあり、食器、調理器具セット、ありとあらゆるキッチン・セットも購入することができる。もし買い物が多ければ有料駐車場があり、カートや有料キャリー・サービスを利用することもできる。
買い物に当たっての注意点
市場での買い物にはいくつか、知っておいてよい簡単な規則がある。食品はできるだけ自分で手にとって選び、売り手に任せないこと。試食を勧められたら遠慮しない。それどころか、さらに試食を求めること。匂いを嗅ぎ、手で触り、よく見比べ、試食することだ! もっとも質の良い食品と思われる店の売り手と懇意にす ることも大切だ。市場でまず選ぶのは、食品ではなく、肉屋、八百屋、牛乳屋など、それを売る人たちなのだから。販売員と話し、販売員の健康を尋ね、 いろいろな食品をどう調理するのか、質問する。その後、あなたが常客になれば、よい品を取っておいてくれ、値引きしてくれたり、ちょっとしたおまけをつけてくれることもある。お得意さんはいつでも大切にされるものだ。
市場をいろいろな角度から詳細に研究し、よく見て、値段を確かめる。そして市場を隈なく歩くこと。同じ市場でずっと安い店があるかもしれないのだ。同じ野菜でも陳列の美しさに飛びつかないこと。目が飛び出るほど高価なこともあるのだから。品物が気に入ったら、まず価格を知り、値切り、そのあとで買うこと。 食品が運び込まれたばかりで、品数が豊富な朝の市場もよいが、売り手が疲れ、品数が少なくなったが、それでも売り切ってしまわなければ食品が駄目になる、 夕方の市場も捨てがたい。思い切り値引きしてくれるかもしれない。
買い手にとって唯一の問題は、衝動買いしたり、無駄足を踏んだりしないように、あらかじめメニューを決め、必要な食品のリストを書いておくことだ。
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