刊行:2013年3月
竹内恵子 著
成文社
ヨシフ・ブロツキイという名前を聞いて、「あぁ,あの人」と思う日本人がどれだけいるだろうか。ブロツキイは詩人で、ノーベル文学賞を受賞した5人のロシア人の一人だ。
独ソ戦の傷跡も生々しいレニングラード(現サンクトペテルブルク)で生まれ育ち、徒食者として流刑に処せられるなどソ連政府から迫害を受けながらも、独自の作風を築きあげた。32歳でアメリカにわたり、55歳で没するまでロシア語と見事な英語で著述活動をした。
本書は、現代ロシア詩の巨匠ブロツキイを多角的に論じた日本で初めての本格的な研究書である。
ロシア語の超絶的な韻律技法と深遠な思想に踏み込みながら、その作品の全体像をわかりやすい日本語で描出している。高度な分析力を豊かな言語表現で提示しているところが本書の魅力である。