オスタンキノ宮殿、19世紀。
農奴が設計、建設、出演
オスタンキノ宮殿(地下鉄ヴェデンハー駅)は、モスクワの観光名所の一つだ。農奴が設計、建設した。石造りに見えるが、大理石や漆喰を模した木造。200人収容できる劇場がある。
シェレメチェフ伯爵家はやはり18世紀に、クスコヴォ(モスクワ地下鉄ノヴォギレーエヴォ駅)の宮殿と庭園も建てている。
広大な左右対称のフランス式庭園に大小の宮殿、建物が散在。17もの池と運河を配しており、宮殿が水上に浮かんでいるように見える。ここの陶器博物館も見ものだ。
農奴の名ソプラノ、ジェムチュゴーワ
両宮殿の劇場では、農奴の歌手、俳優が出演した。なかでもプラスコーヴィア・ジェムチュゴーワ(1768~1803)は、当代最高のソプラノ歌手だった。
彼女は、1787年にはクスコヴォで、女帝エカテリーナ2世臨席のもとで、フランスで活躍した作曲家グレトリのオペラ「Les Mariages samnites」の主役エリアナを演じた。女帝はその出来栄えに驚嘆し、ダイヤモンドの指環を贈ったという。
伯爵との悲恋
このプラスコーヴィアとニコライ・シェレメチェフ伯爵(1751~1809)との悲しいロマンスは有名だ。
ニコライは、彼女を農奴身分から解放し、1801年に密かに結婚した。しかし彼女は、わずか2年後、長男ドミトリーの妊娠、出産で持病の結核が悪化し、産後3週間で亡くなった。
ニコライは妻の遺言で病院付きの救貧院を建て、数年を経ずに亡くなった。救貧院の美しい建物は、現在、ロシア最大の救急病院「スクリフォソフスキー記念病院」となっている。
2人が密かに式を挙げた教会も、モスクワのポヴァルスカヤ通り5番地(ノーヴイ・アルバート通りの書店「ドーム・クニーギ」の隣)に現存し、恋人たちのひそかな名所になっている。
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