レンブラントの『ダナエ』に硫酸

『ダナエ』

『ダナエ』

1985年の今日、6月15日に、オランダの画家レンブラントの傑作『ダナエ』(エルミタージュ美術館所蔵)に、リトアニア人の青年が硫酸をかけた上、刃物で2回切りつけた。事故当日から1997年まで、12年かけて修復作業が行われたが、原画の輝きは失われてしまった・・・。

 巨匠レンブラント・ファン・レイン(1606~1669)の『ダナエ』は、1636年の作だ。ダナエはほぼ等身大で、絵の大きさは185センチ×203センチ。

 ダナエの顔は初め、妻のサスキア、後に愛人ヘーヘルト・ディルクスをモデルに描かれた。

 

ダナエとは 

 ギリシャ神話によると、ダナエは、アルゴス王アクリシオスの娘で、父によって青銅の部屋に幽閉される。ダナエの男児が彼を殺すという神託を得たためだ。

 ところが、彼女を見初めたゼウスが黄金の雨となって降り注ぎ、彼女と交わる。生まれたのが英雄ペルセウスだ。

 彼は生まれると海に流されるが、成長して帰国し、競技に参加する。そして彼の投げた円盤がアクリシオスに当たり、彼は予言通り死ぬ。

 

手をしばられ顔を歪めたキューピッド 

 ダナエは、多くの画家が描いているが、レンブラントのそれには、すぐに目に付く特徴がある。

 ダナエが右手を前に差し上げていることと、キューピッドが手をしばられ、顔を苦しげに歪めていることだ。これにはいろいろな解釈がある。

 

不可解な動機 

 1985年6月15日、リトアニア人の青年が、レンブラントのホールにやって来ると、美術館の職員に、「どの絵がいちばん価値があるか」と尋ね、「ダナエだ」と聞くと、硫酸をかけた上、刃物で2回切りつけたという。その結果、ダナエの顔など、絵の中央部分は絵の具がほとんど流れ落ちてしまった。

 動機について、青年は、政治的な理由を挙げたり、「ダナエに誘われ、交わるためだった」と述べたりしたという。精神鑑定が行われ、同年8月26日に精神分裂症との診断が出た。彼は、レニングラード(現サンクトペテルブルク)の精神病院に送られ、6年間入院生活を送ったと伝えられる。