『ダナエ』
巨匠レンブラント・ファン・レイン(1606~1669)の『ダナエ』は、1636年の作だ。ダナエはほぼ等身大で、絵の大きさは185センチ×203センチ。
ダナエの顔は初め、妻のサスキア、後に愛人ヘーヘルト・ディルクスをモデルに描かれた。
ダナエとは
ギリシャ神話によると、ダナエは、アルゴス王アクリシオスの娘で、父によって青銅の部屋に幽閉される。ダナエの男児が彼を殺すという神託を得たためだ。
ところが、彼女を見初めたゼウスが黄金の雨となって降り注ぎ、彼女と交わる。生まれたのが英雄ペルセウスだ。
彼は生まれると海に流されるが、成長して帰国し、競技に参加する。そして彼の投げた円盤がアクリシオスに当たり、彼は予言通り死ぬ。
手をしばられ顔を歪めたキューピッド
ダナエは、多くの画家が描いているが、レンブラントのそれには、すぐに目に付く特徴がある。
ダナエが右手を前に差し上げていることと、キューピッドが手をしばられ、顔を苦しげに歪めていることだ。これにはいろいろな解釈がある。
不可解な動機
1985年6月15日、リトアニア人の青年が、レンブラントのホールにやって来ると、美術館の職員に、「どの絵がいちばん価値があるか」と尋ね、「ダナエだ」と聞くと、硫酸をかけた上、刃物で2回切りつけたという。その結果、ダナエの顔など、絵の中央部分は絵の具がほとんど流れ落ちてしまった。
動機について、青年は、政治的な理由を挙げたり、「ダナエに誘われ、交わるためだった」と述べたりしたという。精神鑑定が行われ、同年8月26日に精神分裂症との診断が出た。彼は、レニングラード(現サンクトペテルブルク)の精神病院に送られ、6年間入院生活を送ったと伝えられる。
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