刊行:2012年11月
相沢直樹 著
新曜社
「ゴンドラの唄」って、「命短し恋せよ乙女」というあれ?けれど、背景はベネチアのはずで、ロシアとどういう関係があるの?といぶかる向きもあろう。
とはいえ、この歌は大正ロマン華やかなりし頃、ロシアの文豪ツルゲーネフの小説を新劇の旗手・島村抱月が舞台化した『その前夜』の劇中歌だった。やがて黒澤の『生きる』で主題歌になったことからもわかるとおり、この歌謡は日本の大衆に愛されてきた。セーラームーンはじめアニメ、コミック、CMでいまなお残響が鳴りやまない。
本書は比較文化の研究手法を駆使して、「ゴンドラの唄」の成立事情、受容史に迫り、大衆レベルでの日欧文化交流の足跡をたどる。オタクの王道をも極めた魅惑の書、だまされたと思って手にお取りあれ。