街で出会う新時代の伝統模様

 ロシアの伝統的な模様が復活している。モスクワの街をホフロマ模様のポルシェやBMWが走り、伝統刺繍入りのスポーツウェアやジーンズを着こなす人々が闊歩している。そして青いグジェリ模様の冷蔵庫なんてアイデアも生まれている。ロシアNOWはそのような伝統様式を満喫する人々に取材し、なぜ今これを選ぶのかなどを聞いた。

 昔ながらのグジェリ模様が描かれたトロリーバスが、モスクワに増えている。また、黒、赤、金のホフロマ模様が描かれた派手な公衆トイレが、人々の注目を集めている。このような現象が起こったのは、ここ数年の話だ。これまでは高齢の女性のかぶりものというイメージが強かったロシアの伝統的なスカーフを、若い女性が身につけるようになり、グウェン・ステファニーなどの世界のスターも、ロシアの小さな町パヴロフスキー・ポサドのスカーフを愛用している。

 ロシアの伝統模様は種類が豊富だが、現代のロシアでトレンドとなっているのは、ホフロマとグジェリだけだ。

 グジェリは、16世紀に生まれた古いロシアの手工芸だ。真っ白な地にコバルト色の模様が描かれているのが特徴となっている。グジェリという名称は、陶器が生産されているモスクワ州グジェリ村に由来している。伝統的な絵柄は鳥と花だ。

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 ホフロマは、木製食器に描かれる多色模様だ。新しい形態でグジェリよりも人々に気に入られた。ホフロマという名称は、ニジニ・ノヴゴロド州の大きな商業の村、ホフロマ村に由来している。

 「古き良き時代」の流行は、有名なロシアのデザイナーであるデニス・シマチョフ氏が、春夏コレクションを発表した2007年に仕掛けたと考えられている。シマチョフ氏が、アエログラフィのほどこされた自動車ポルシェとバイク・ドゥカティ、限定版アイフォンを持つようになったのだ。また同氏の遊び心はこれにあきたらず、冷蔵庫にまで模様を入れてしまった。「白い冷蔵庫を買うだけじゃつまらないけど、ホフロマ模様の入った冷蔵庫なら愛国的だ。つまらないと思ったままでいるか、愛国者になるかの二者択一だ」とシマチョフ氏。

 ロシアの伝統模様が入った自動車、服、電話を持っている人たちに、実際に話を聞いてみた。

 

アレクサンドル・ライスさん、ポルシェ・ボクスターSマトリョーシカ所有者

 アレクサンドルさんは模様入りのポルシェを購入した。車体のホフロマ模様には、45万ルーブル(約140万円)かかっている。この車がモスクワの街を走り始めると、予想外の効果をもたらした。アレクサンドルさんは、街でたくさんの人々がこの車を見て笑顔になった時の感動が、一番重要だと話す。一時このポルシェは大変な人気になり、この車と一緒に写真を取ろうとする女性の行列が毎週末できていた。

 

ナターリアさん、BMW X5所有者

 ナターリアさんの夫のマクシムさんが、2009年に息子が誕生した記念として、妻にこれをプレゼントした。ボンネットに模様をつけるというアイデアもマクシムさんのものだった。「車がドイツ製なので、特別なロシアらしいものを加えたかった」と話す。ホフロマ模様にすることに決めたが、白い車に映えるように、伝統的な配色ではなく、灰色系でまとめた。絵柄はマクシムさん自身が考え、デザイナーがそのアイデアの具現化を手伝ったという。

 

エフゲニヤ・アルペエワさん、シボレー・クルーズ、携帯電話、ジーンズ所有者

  エフゲニヤさんは、最初の車であるロシアのラーダを所有していた時から、ホフロマ模様を入れたかったと話す。2012年に新車を手に入れ、自分でスケッチを描き、伝統的な配色に沿った色を選んだ。模様を描くことで、ロシア固有の何かを身の回りに置くことができるため、愛国心をくすぐるという。自動車のみならず、携帯電話にもホフロマ模様のシールを貼り付け、またホフロマ柄の刺繍がほどこされたジーンズや同じスタイルのスカーフを身につけている。

 

アレクサンドル・ベロフさん、ノートパソコン所有者

 アレクサンドルさんは、ホフロマ模様の入ったノートパソコンを所有する、スタイリスト兼イメージ・メーカーだ。「芸術様式のアイデアがある物が好き。ルーシ(中世ロシア)のアイデアはロシアの伝統であり、身近なものだ。ロシアらしさが反映された服、物、インテリア・グッズが好きで、自分でノートパソコンにホフロマ模様を描いた。これは世界に一つしかないよ」。

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