=PressPhoto撮影
アーティスト・イン・レジデンスのコンセプトは、かなり前からヨーロッパ各国やアメリカで人気となっている。それぞれのアーティスト・イン・レジデンスに独自の特徴や規則があり、創作生活共同体のような場所や、わずか2~3人の芸術家が創作しながら共存している場所もある。唯一の共通点は、ここに集まる芸術家には、自分のアイデアを具現化できる時間と潜在性があり、優れた創作的コラボレーションを最大限に利用できるという点だ。
ロシアにはこのような場所はまだ少ないが、モスクワ以外の地方都市にもあることは注目に値する。
モスクワの「赤い10月」製菓工場の敷地に、「プロエクト・ファブリカ」が2008年にオープンした。収容人数1人から2人の空間は、豪華とは到底言い難い場所だが、5つ星ホテルのような条件を期待していない芸術家にとって、ここは十分な城だ。
「プロエクト・ファブリカ」が必要としているのは、ダンスや演劇のけいこ場、映像芸術分野の専門家用の作業スペース、芸術家や彫刻家向けのスタジオ、プロジェクトのプレゼンテーションの場所といった、クリエイティブな空間である。「プロエクト・ファブリカ」の住人になるためには、自分の専門、プロジェクト、資金源(西側諸国とは違い、ロシアでは居住が有料となる)などを記した申請書の提出が必要で、食費や作業材料も負担しなければならない。
モスクワの南西約600キロに位置するペンザ市で「アート・レジデンス・ペンザ」プログラムが始まってから3年がたつ。1ヶ月から2ヶ月ほど滞在し、思う存分に創作活動を満喫し、アート・ギャラリーのISSペンザに作品を展示することができる。運営側と調整すれば、好きな時に来ることができる。一年中オープンしていて、作業用のアトリエ、展示スペース、プログラム参加証明書などが提供されている。
ここを利用するためには、電子申請書を送り、特別委員会に査収してもらうことが必要だ。芸術家が参加に適していると判断されれば、地元の工房で作業することができるようになるが、作品を必ずギャラリーに展示しなければならない。参加は無料。
バルチック艦隊の軍港があるクロンシュタット市中心部に、国立現代美術センターのアート・レジデンスがオープンした。2階建ての建物は、国立現代美術センターの仕様に合わせられ、ベッドルーム寝室3室、リビング2室、スタジオ1室、メディアラボラトリーを利用できるようになっている。開設から8年、国際フェスティバルの「インターコネクション」や「クロンシュタット・フォーエバー」、パブリック・アート・プロジェクト「フィールド・スタディーズ」など、国際レベルのさまざまな文化行事が行われている。クロンシュタット市は、パブリック・アート、造園設計、社会調査分野に興味のある芸術家を、しばしば呼び寄せている。
ウラル山脈の西側にあるペルミ市の芸術家や市政府によって2011年、このアート・レジデンスが設立された。設立の目的は、この地方都市をロシアの文化都市のひとつに変えるということだった。ここでつくられた作品はその後、国際展示会に送られたり、無償で街が使用したりすることになる。ペルミ・アート・レジデンスでは、映画クラブ、写真クラブ、旅行グループも活動しているなど、あらゆる創作分野が集約されている。ここを利用するためには、電子申請書を送り、特別委員会に査収してもらうことが必要だ。
モスクワから南西200キロに位置するニコラ・レニヴェツ村(カルーガ州)は、芸術家であるニコライ・ポリッスキーのモニュメントや、同氏が企画したフェスティバル「アルフストヤニエ」などにより、知られるようになった。ここには2012年にアート・レジデンスがつくられたが、すぐに世界の建築分野やデザイン分野の一流専門家らが注目するようになった。その後しばらくし、「地域発展マネージメント」、「地域と集落の経済および社会学」、「建築と地域プランニング」などの方向性を持つ教育プログラムも計画された。国際ネットワーク「トランス・アーティスト」は、「ニコラ・レニヴェツ」をヨーロッパ最大のアート・レジデンスであるとしている。
*元原稿
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