ソチGPファイナルの総評

ソチGPファイナル =アレクサンダー・ヴィルフ/ロシア通信撮影

ソチGPファイナル =アレクサンダー・ヴィルフ/ロシア通信撮影

フィギュアスケート男子シングルの元選手で、リレハンメル五輪の金メダリストであるアレクセイ・ウルマノフ氏が、グランプリ(GP)シリーズのソチ・ファイナルを総評した。男子シングルではパトリック・チャンと高橋大輔に注目。また女子シングル、ペア、アイスダンスのロシアの選手などについて語った。

別格の高橋とチャン 

男子シングルでミスなく演技した選手はいなかったものの、このレベルの高さと競争の激しさについては言及せずにいられない。ファイナルとしては、ミスはそれほど多くなかった方だろう。昨シーズン不調だったパトリック・チャンは、今大会でもショート・プログラムで出遅れ、銅メダルに終わった。それでもチャンと優勝した高橋大輔には、技術だけでなく、カリスマ性や氷上での表現力などの点で、とても存在感があった。ファイナルに出場した他の選手はそれなりに素晴らしいが、やはりこの二人に追いつくにはまだまだ努力が必要なほど、二人は別格だ。この二人がエフゲニー・プルシェンコとどんな戦いをするのか、とても見てみたい。

アレクセイ・ウルマノフ

1973年11月17日レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれ。
スポーツ・マスターの称号を持つ。
1994年リレハンメル五輪優勝、ヨーロッパ選手権優勝。

ヨーロッパ選手権が終わってから、プルシェンコは大会に参加していないため、シーズンに向けた準備状況を評価することは難しい。

浅田のほかトゥクタムィシュエワに注目 

他の選手に対する浅田真央の優位性は間違いなかった。フリーで2位となったエリザヴェータ・トゥクタムィシュエワの演技については、少し詳細に記したい。このレベルでショートを滑っていたら、100%メダルを取れただろう。トゥクタムィシュエワのアレクセイ・ミシン・コーチは大会後、ロシア選手権大会に向けてトゥクタムィシュエワのプログラムの難易度を上げると言ったが、上げるポイントをすでに見極めているならそれは素晴らしいことだ。プログラムは難しいほど、競争相手を追い抜くことができる。トゥクタムィシュエワはすでにシニア・レベルで競争する準備ができているが、去年からすでにそれはできていたし、ファイナルでも証明された形となった。

もう一人のジュニア上がりのユリア・リプニツカヤが、ケガでファイナルに出場できなかったことは残念だ。とても才能があって、伸び代が大きい選手だ。ジュニアの大会で活躍するのとは違い、シニア最初のシーズンでGPファイナルに出場していたら、とてもおもしろかっただろう。常にダイヤモンドの原石を本物の輝く宝石に変えることができるわけではないし、今の若い選手がどう育って行くかを予測するのも難しい。リプニツカヤがシニアに完全に順応するまで、ただ待つしかない。

ペアは露の独壇場 

今回のファイナルで銀メダルを獲得したペアのベラ・バザロワとユーリ・ラリオノフ組は、ショートでもフリーでもこれまでの最高の演技を見せた。金メダルを獲得したタチヤナ・ボロソジャルとマクシム・トラニコフ組とは僅差だったし、フリーでは順位を1位にあげていたから、ボロソジャル・トラニコフ組はその権威で勝ったという印象を多くの人が持ったかもしれない。バザロワ・ラリオノフ組の今回の滑りはとても気に入ったことは確かだが、私はそのような意見には同意できない。

川口悠子とアレクサンドル・スミルノフ組は今回6位にとどまったが、これを悲観する必要はない。途中スタートで失敗することは、成功するよりも良い効果をもたらすことがある。演技を磨くことが必要だということがこれでわかった。

ダンスはアメリカ優位 

アイスダンスのエカテリーナ・ボブロワとドミトリー・ソロビヨフ組は、フリーで転倒してしまい、メダルを狙うどころか4位の順位をさらに落してしまった。ソロビヨフは失敗の理由を緊張したことにあると説明したが、良い成績を収めたいのなら、そのような問題は乗り越えなければならない。アイスダンスは他のフィギュアの種目と違い、転倒が全体的な印象をぼかしてしまう。

ワンシーズンを通して、カナダのテッサ・ヴァーチュとスコット・モイア組、続いてアメリカのメリル・デイヴィスとチャーリー・ホワイト組が、理想的な滑りで上位を占めているという印象を受けるが、現在のトップはやはりアメリカのペアのようだ。個人的には、ヴァーチュ・モイア組の「カルメン」よりも、デイヴィス・ホワイト組のダンスの方が気に入った。