Getty Images/Fotobank撮影
生産量上回る注文
ロシアの花市場に、日本産の牡丹(ぼたん)が広がり始めた。山陰の古都・島根県松江市から苗木の試験輸出が始まって4年目。最初の年に200本だった出荷量は順調に増え、今年は過去最高の1500本に達した。
「マツエの牡丹は今年はいつ買えるの」。この夏、ウラジオストクやハバロフスクの花屋に、一般客からのこんな問い合わせが相次いだ。
松江の牡丹輸出の仕組みはこうだ。生産者団体のJAくにびきが、松江に隣接する鳥取県の境港から、ウラジオストク行きの定期フェリーに乗せて苗木を出荷。パートナーであるウラジオストクの花業者が受け取り、極東地域に流通させる。
苗木を運び込むだけではない。松江市や島根県、日本貿易振興機構(ジェトロ)なども協力して、ウラジオストク、ハバロフスクの2都市で毎秋PRイベントを開いて知名度アップに努めてきた。
今年は9月下旬から10月中旬にかけて、一般消費者向けの展示即売会を3回開催。どの回も大入りで、数百本の苗木が即日完売となった。特に、「松江ブランド展」として催したイベントにはウラジオストク市内の会場に2000人が詰めかける盛況ぶりだった。
なぜ人気が出ているのか。理由は、少なくとも価格ではなさそうだ。今年の苗木の販売価格は1本1100ルーブル(約2800円)で、日本での相場の約3倍だ。輸送などの経費がかかるためで、安価な中国産の牡丹と比べれば5~10倍の開きがある。
JAくにびき特産課の佐川真二係長は、好調の理由をこう説明する。「ロシア市場の牡丹は、花が下向きに咲く中国産が主流。この中で、上を向いて花開く松江の牡丹は美しさで競争力があります。また、中国産に比べて枯れにくいとの評価もいただくようになりました」。実際、リピート客が目立つという。前年試しに買ってみた牡丹が予想以上にきれいに咲き、別の色・種類を集めたくなった客も多いようだ。
実は今年、ロシアから2000本近い注文が来ていた。生産量が追いつかないため1500本に抑えざるを得なかったという。
JAくにびきは今、ロシア市場向けの牡丹栽培を始めることを計画中だ。来春にもウラジオストクからパートナー業者を招いて、品種や量の詳細を詰める。
牡丹はこれまで極東に限った展開だったが、2013年にはサンクトペテルブルクなどヨーロッパ側の大都市での販売も実現しそうだ。JAの佐川係長は、「ロシアは花を好む国民性もあり、我々にとって有望な市場。まずは年間出荷量を早期に1万本レベルに引き上げたい」と意気込みを語っている。
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