左下:みかん、中央下:イクラのオープンサンド、右下:魚の煮こごり、左上:シューバ(毛皮のコート)を纏ったニシン、右上:サラダ「オリヴィエ」=キリル・ラグツコ撮影
ロシアでシャンパン抜きの正月の宴会など考えられないが、これには祖国戦争(ナポレオンのロシア遠征)が深く関係している。
1813年、ロシア軍がフランスのシャンパン醸造のメッカであるランスにあるブーブ・クリコの酒蔵を襲った。勝手に略奪させたマダム・クリコは賢かった。シャンパンの評判は全ロシアに広がり、3年後には、ロシアでの注文がフランス国内よりも上回るようになった。
新年の食卓のメーンは、焼いたガチョウか、ソバがゆを詰めた子豚の丸焼き。(ガチョウはクリスマスに食されていたが、正月にスライドした)。メーンに添えるのが次の5品である。
みかんを新年の食卓に出すようになったのはソ連時代から。ソ連は果物を輸入しておらず、12月に熟するアブハジア産のみかんが唯一この時期に食べられる果物だった。
シューバ(毛皮のコート)をまとったニシンこそソ連時代の主婦たちが物不足の中で何とか出せたお祝い料理だ。
居酒屋経営のボゴミロフがプロレタリアートの象徴たるニシンに、農民の象徴たるジャガイモとビート(血と赤旗のシンボル)を加え、マヨネーズを塗った。この苦心の作を自分の居酒屋に出したのは、1918年の大みそか。客は大喜びだった。
新年にイクラを食するのは帝政時代からの習慣。ソ連時代は品薄だったので、バターを塗った白パンにイクラをぱらぱらとのせ、パセリなどを添えて出すのが常だった。
毎年大みそかに放映される映画「運命の皮肉」で、ヒロインが魚の煮こごりに失敗する。これは20世紀の謎の一つだ。この料理は最悪の場合でも、ゼラチンが足りなくて、汁が残るだけなのだから。
「ロシア風サラダ」と呼ばれるこのサラダは、お正月や祝日の食卓に欠かせない一品である。鶏肉、牛肉、ハム、ソーセージ、さらに最近ではエビやザリガニの肉も用いられる。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。