=ロシア通信撮影
米国の再産業化
エネルギー価格が大幅に下がれば、必然的に産業の現代化を促し、米国の産業の一部は同国に戻るだろう。グローバリゼーション問題研究所長ミハイル・デリャーギン氏の推定によると、安価な労働力を求めて海外に展開していた米国企業は、最大でその4分の1までが本国に戻ってくるという。
一方、米国の最大のライバルである中国は、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の専門家の推測では、シェールガス革命において、米国から遅れをとっており、自国の消費の7%しかシェールガスでまかなえない。
ロシアはというと、天然ガスに恵まれていることから、シェールガス革命については懐疑論がもっぱらだ。だが、そのロシアの専門家も、この革命の結果、世界のエネルギー市場が一変するであろうことは認めている。
発電所から石油が消えた
IEAのガス・石炭・電力局長ラスロ・バルロ氏によると、今年、最初の7ヶ月で、アメリカ市場のガスの価格が、1千立方メートルあたり100ドル以下にまで下がり、この国のエネルギー業界は激変した。米国ではもはや、発電所から石油が事実上消え、ガスが交通機関で広く使われるようになりつつある。
これに関連し、デリャーギン氏も次のように指摘する。エネルギーの値下がりは、経済危機が深刻化するなかで、米国の競争力を支えるのみならず、その再産業化をも促す、と。
再産業化が進捗すれば、米国産ガスはあまり輸出されないだろう。バルロ氏の中期予測では、米国産ガスは、今のロシア産の輸出量の3分の1しか輸出されない。
増え続けるアジアのガス需要
中国のガス需要も増えており、「スコルコボ基金」の専門家の予測では、2030年までにほぼ4倍増(4000億立方メートル以上)となるという。
その際、シェールガスなど新種のガスは、需要増加を促し、輸入量には影響しない。一番可能性の高いシナリオでは、新種のガスの採掘量は500億立方メートル程度、最大でも1500億立方メートルなのに対し、輸入は2000億立方メートルに上る。
中国にとっての問題は、アジアにはLNG(液化天然ガス)の大口輸入国が、あと少なくとも2つあるということだ。つまり、日本とインドだが、「スコルコボ」の専門家の予測だと、日本のガス需要は、2030年までに約3分の1、すなわち1200億立方メートル増える。
しかし、IEAの専門家は、日本は脱原発政策にもかかわらず、それを実行できないという。「我々は、日本が近い将来に脱原発できるとは信じない。日本は極端に人口過密な国だ」とバルロ氏は言う。
彼の意見では、完全な脱原発のためには、世界最大級のガス田のうちどれか一つを選んで、大投資を行わなければならない。
供給を上回る需要の伸び
ちなみに、そうした潜在的なガス供給地は、現在少なくないし、かつて米国が投資、開発していたLNGの一部が、アジアに向けられようとしている。しかも、近い将来にオーストラリア産のLNGも大量に市場に出てくる(もっとも、その一部は大陸棚で採掘されているので高価だが)。
さらに、向こう20年の間に、ロシアの東シベリアと極東のガスも市場に出回るだろう。その量は、スコルコボの専門家の推定で、2030年までに1100億立方メートルに達する。
また、アフリカの東部海岸のタンザニアやモザンビークの大陸棚には、大きなガス埋蔵量が見つかっており、これも地の利から言って、アジア市場に出回り得る。もっとも、この2国には、外国の投資と開発専門家が必要となるが。
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