強くなりすぎた東方の超大国

ナタリア・ミハイレンコ

ナタリア・ミハイレンコ

中国共産党第十八次全国代表大会は、ロシアと中国がどれだけ近づくべきかということを改めて考えさせるものだった。はたしてロシアは、中国と対等のパートナーになれるものだろうか。

世界は新しい超大国の誕生を見つめているが、かつて、こういう誕生のプロセスが対立なしに進んだことはなかった。ロシアとしては、対中関係における自国の経済的、軍事的、政治的立場について、考えずにはいられない。現在の露中“パートナーシップ”を評価する時、中国が“誘導する”側で、ロシアが“誘導される”側という印象がぬぐえないからだ。

3つのリスク 

中国との付き合いで、ロシアが慎重になる理由は3つある。

一つ目は、まったく経済的な理由だ。ロシアの対中輸出は、対欧輸出に比べてさえ、さらに「原料的」だ(2011年度の原油、木材、金属の対中輸出が74.2%なのに対し、対欧輸出は62.8%)。そしてロシアは、中国から工業製品を買っている(とっくの昔に自分で生産できるようにすべきだったのに)。このような協力関係を拡大することは、ロシアの産業の空洞化、また最終的には現代化すべての崩壊を意味する。

このことは、2009年に採択された、ロシア極東および東シベリアと中国東北部の大々的な協力プログラムでも裏付けられている。中国は、ロシアの6つの地方自治体(連邦構成主体)で、有用鉱物の鉱山開発を行うようになったが、ロシア国内の加工生産工場建設には、一切投資をすることはなかった。

ハイテク分野の“協力問題”も奇妙だ。中国は今日、ハイテク製品を生産せずに、輸入している。それなら、ロシアはなぜ、それを生産している国から直接獲得しようとしないのか?

火中の栗 

二つ目の理由は、政治的一般論だ。中国は独自路線を進み、西側の政治的既成概念を採用しようとはしていない。ロシアはその路線に従い、現代世界から自国を切り離している。中国との友好関係を保つために、ロシアは国際政治におけるイメージを犠牲にしなければならないのだ。

中国は最近、「全速力で」アメリカ、日本、さらにはインドと対立する方向に向っているが、強大化する国はどこでもそうであるように、中国もやがて世界的な不信の対象となるだろう。そして、アメリカに取って代わって、弱小国にとっての主たる「地獄の責め苦」となり、世界中がそれを「抑止」しようとするだろう。ロシアはこのような対中関係からどんな利益を得ようというのか。

戦略的リスク 

三つ目は、戦略地政学な理由だ。現在、ロシアの環太平洋地域への“シフト”について多く語られているが、「東方」が「中国」しか意味しないのはなぜだろうか。太平洋を東方に進むと、西側にたどり着くのに。

ロシア東部で、ウラルやロシア西部と同様の産業クラスターが形成されるならば、ロシアの国力が増大するのは確かだが、中国だけが東部開発の頼りなのだろうか。ロシア極東は「ロシアのカリフォルニア」になるべきで、バルト海沿岸と同じように太平洋沿岸でも足元を固める必要があるが、それには、中国に支援を頼むよりもかえって中国ぬきの方が簡単に達成できる。中国は北方に競争相手をもつ気はないからだ。

パートナーは日本、韓国、米国 

ロシアは中国との関係を築くなかで、自国の利益をもっとはっきり見定める必要があるのではないだろうか。ロシアの国益は、口実の有無にかかわらずアメリカに嫌味を言うことだけにあるのではない。経済の現代化と、資源依存からの脱却のために、技術を身に付け資金を集める一方で、強大な民主国家との確固たる同盟を通じて、自国の安全を保証することにこそある。中国はこれらのどの課題の解決においても、ロシアに手を差し伸べることはできない。

ロシアは、中国にばかり血道を上げるのではなく、世界との、とくにアジア太平洋地域との、新たな関係を構築すべきだろう。

ロシア極東の発展に必要な技術をもたらしうる国とは、自ら多くの新技術を生みだしており、中国に依存しない工業中心地域の出現に関心をもつ国だ。つまり、日本、韓国、アメリカである。この3国こそが太平洋地域の主要なパートナーだ。日本と韓国がシベリアの重工業発展の主な原動力となるように、ロシアは努力しなければならない。

北方領土の一部返還も 

そのためには、ロシア外交に目に見える変化が必要となってくる。まず、日本とは平和条約を結ばねばならない。その際、経済的、政治的協力関係の利点を明確に理解した上で、領土問題になっているクリル諸島(千島列島)の一部を返還することは、裏切り行為ではなく、逆にロシアの国益を守ることになるだろう。

アメリカにも、二国間関係および多国間関係において、オファーできることがあるはずだ。中国を抑止するために、ロシア極東を日本、韓国、アメリカとの協力の場に変えることは、極東の現代化において最も重要なポイントとなる。極東の現代化は、中国の計画にまったく入っていない。

政治的には、こうした同盟は、ロシア-日本-インドの三国同盟となりうる。実現すればアジア全体の安全保障システムの重要な要素となるだろう。

ロシア外交のこのような転換は、遠い将来には、世界の先進民主主義国家すべて、すなわち、欧州連合(EU)、ロシア、アメリカ、日本を統合する「北方同盟」となって、結実するかもしれない。もし実現すれば、史上空前の強力な同盟となる。

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