ロシア風チューニングカー

1960年代のイタリアのフィアットと同じ、1984年式の古いラーダ21013 =エレナ・ポチェトワ撮影

1960年代のイタリアのフィアットと同じ、1984年式の古いラーダ21013 =エレナ・ポチェトワ撮影

ロシアの自動車は単なる移動装置にとどまらず、ステータスの指標であり、個性のアピールであり、自己表現の手段でもある。ロシアではソ連時代から、快適性と外観の改善を願わずにはいられない自動車が製造されてきた。このようなロシアの自動車産業の特徴により、消費者は自分の車を自力で”完成”させなければならなかった。

ラーダをスポーツカーに 

カルーガ市(モスクワの南西190キロ)のデニスさんは、2007年式のラーダ21014を完成させる際、スーパーカーをイメージした。

「見本市に出してみんなを驚かすために、特別に車を改造しました。最初にプラスチック製のボディキットとボンネットを買って、次に上に開くガルウィング・ドアに変えました。スポーツ・サスペンション、スポーツ・トランスミッション、非標準的なブレーキ・システムも装備しています」。

ボンネットをドアが持ち上がった状態で何度も開けようとしたため、ボンネットの基礎部の両わきには深いキズがいくつもある。開いた状態のドア自体が、ドア開口部を角部45度に2分割してしまうので、スポーツカー特有の深いシートからこのドアを開けて外に出るには、よほど敏しょうで体のやわらかい人でないと無理だろう。

トヨタMRSで本物を目指す 

デニスさんはラーダで十分楽しんだため、今度は本物のスーパーカーを買いたいと思っている。自分の夢を実現するため、日本国内向けに生産された2002年式のトヨタMRSを購入した。今度はMRSを必要な状態までもっていく必要がある。デニスさんは、次のステップが本物のスーパーカーとなる可能性があると言う。

「多くの人が、フェラーリやポルシェに乗りたければ、運転をマスターするために最初にMRSを買えと言います。道での動きが似ているし、リアエンジンで、重心もだいたい車体中心にありますしね」。MRSのフロントパネルに貼られたフェラーリロゴのシールが、デニスさんの意志を証明している。

1984年式ラーダを超改造 

オレグさんは、デニスさんと同様、他の人を驚かせようと車を改造した。実験用に、1960年代のイタリアのフィアットと同じ、1984年式の古いラーダ21013を選んだ。

車を買った時点ですでに設計諸元とは違う1.7リットルのエンジンがついていたが、改造しているうちに1.8リットルまで拡大した。

「マツダ3(マツダ・アクセラ)のキセノンレンズ、日産プリメーラの強化ラジエーターとファン、アウディA8のディスク・ブレーキ、油圧ハンドブレーキ、ブレーキを取りつけました。車内にはショート・シフト・レバーと、追加的な装置を装備し、さらにスパルコのドライバーズ・バケット・シート、ホンダ・プレリュードのパッセンジャー・シートを装着しました。ハンドルは取り外し可能で、持ち歩くことができます。優れた盗難防止システムです」。

もはやゲージツ 

ユーリーさんも、オレグさんやデニスさんと同様に、「ラーダ・カーズ・クラブ」の自動車愛好家グループのメンバーだ。現在2003年式のラーダ2107の改造に取り組んでいる。その車は一見空っぽに見える。エンジンと、冷却液つきのエクスパンジョン・チャンバーが見えるだけだ。

「うまく組み立てられているだけなんですよ。トランクにバッテリーがあって、ウィンドウォッシャー液容器は完全に取り除きました。必要だったら雑巾で拭くだけです(笑)。ラーダ・プリオーラのシリンダーブロックと、トヨタ・レビンのエンジン吸気系がついています。エンジンの上にはエンジンに空気を取り入れるための、『メガフォン』と呼ばれる装置が見えます」。

ユーリーさんはドリフトをマスターするためにこの車を改造したため、幅広のフロントタイヤ、頑丈なショックアブソーバーが装備され、車内にはスポーツ・シート、4点式安全シートベルト、パワーステアリング、スポーツ用強化フレームがついている。

ラーダの所有者たちは、ロシア車は優れた実験用自動車だと言う。価格は高くなく、どんな問題でも簡単な工具で解決できる。改造してできあがるものは、人によっては滑稽に見えるかもしれないが、実際には不眠不休の作業の賜物であり、所有者のイマジネーションが駆使された芸術作品なのだ。