東シベリア・太平洋石油パイプライン =タス通信撮影
現在10万トンのタンカーが、2日おきに「コズミノ特別石油港」(正式名称)の積載埠頭に停泊している。月間出荷量は、東シベリアの油田の軽質原油と低硫黄原油の約150万トンで、2012年はコズミノ港から世界市場に向けて、エスポ原油が1500万トンほど輸出される見込みである。また長期契約によると、同じ量がパイプラインを通じて中国(買い手は中国石油天然气集団公司)に輸出される予定のため、今年度は合計3000万トンほどの輸出量になる。
6年前にはこのような話はまったくなかった。その理由は、残りのロシアの石油パイプラインが、西シベリアの油田(東シベリアからの距離は3000キロ)から西側に伸びているためで、東シベリア・太平洋石油パイプラインの建設が終わるまで、石油を他の場所で採掘する意味はなかった。
今は状況が変わり、東シベリアの石油採掘は急速に発展しているため、2012年の採掘量は3000万トン(2億2300万バレル)になるというわけだ。東シベリア・太平洋石油パイプラインは第1期工事が2009年に完了し、現在行われている第2期工事でロシアの太平洋岸に到達する予定だが、それまではバイカル湖近くに位置するスコボロディノ・ステーションからコズミノ港まで鉄道で石油を輸送している。2013年のコズミノ港からの輸出量は、2200万トン(1億6400万バレル)に達する予定だ。
太平洋の標準油種を目指す
いまだに太平洋には独自の標準油種が存在しておらず、この地域ではシンガポール港から輸出されるドバイ原油が標準となっている。つまり、他の油種の価格は、この原油との価格差になるのだ。特性で言えば、エスポ原油の方が軽質で硫黄が少なく、ドバイ原油よりも優れているため、エスポ原油が諸条件を順守すれば、標準油種になる可能性は高い。ドバイ原油のもうひとつの欠点は、輸送距離の長さだ。これが足かせとなり、太平洋地域はドバイ原油の主要な市場になっていない。
ロシアのエスポ原油が、他の原油の安物バージョンではなく、取引所で価格が決まる標準油種に変わることに、環太平洋地域の原油輸入国すべてが関心を抱いている。
「ブレント原油とWTI原油の相場の下落を例にとると(2008年の金融危機後、アメリカの石油はヨーロッパの石油より20%安くなった)、買い手は取引で地域的な標準油種を扱った方が得であることがわかる」と、独立アナリストのアレクサンドル・コヴァリョフ氏は説明する。
エスポ原油の買い手はすでに生まれており、2011年の輸出量に対する各国の比率は、アメリカ27%、日本19%、中国18%、韓国13%となり、またより少ないものの、フィリピン、インド、インドネシアも含まれている。
高品質と地の利
エスポ原油が標準油種になるための必須条件は、質の安定と納入量の拡大だが、今年で輸出3年目となり、市場ではすでに定評がある。環太平洋地域におけるロシアの原油の主な優位性は輸送距離の短さで、中東からだと数週間要するところを、わずか3日から7日で納入できる。
東シベリア・太平洋石油パイプライン全線が12月に稼働開始になると、原油輸送料は1トンあたり80ドル安くなる。これは市場原油価格の10%に匹敵する。工事完了後の総原油採掘量は年間8000万トンになる予定だ。「トランスネフチ」社(ロシア国内の パイプラインを独占的に保有・運営する企業)が1年前に発表した計画によると、環太平洋地域のロシアの原油のシェアは、現在の3.8%から5.5%になり、将来的には8%にまで達する可能性がある。
増産と安定供給がカギ
ただ、増産と市場への安定供給の面で、まだ課題が残る。エスポ原油の最小取引量は年間2000万トンから3000万トンで、ドバイ原油並みのステータスを得るためには年間5000万トンを維持しなければならない。パイプライン全線稼働は納入の信頼性と速度を高め、販売量拡大の可能性を生み、結果的に「ロシアの原油が中東の原油の代わりとなり、エスポを世界規模のプロジェクトにする」と、投資会社「メトロポリ」のアナリスト、アレクセイ・コキン氏は考える。
標準油種になるまでには通常数年から10年ほどかかるが、エスポ原油は最低でも2年から3年はかかるだろう。東シベリア・太平洋石油パイプラインに原油を送る、新たな採掘企業が事業を開始できるのは、ようやく2015年のことだ。
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