マリーナ・ポポワさん =アンドレイ・ルダコフ撮影
マリーナ・ポポワさんは、モスクワ州の東に隣接するウラジーミル州のミスUISコンテストで優勝し、正式に美女と認められた。このコンテストは一般的な美人コンテストとは異なり、外見だけでなく、優れた専門技能も求められる。一方ではカラシニコフ自動小銃を持ってパトロールしながら、他方ではドレスを着てステージに立たなければならない。
ポポワさんはマカロフ拳銃の射撃で30点中26点を取って上位の成績を獲得し、クロスカントリー競走でも好成績を収めた。ドレスでの登場も美しかったが、1位にはなれなかった。その代わり、経理、法務、人事などの部署ではなく、刑罰矯正システムの現場職員のなかから最終選考に残った数少ないひとりとなった。
武器を携行し服役者を監視
「ポポワは事務はやっていません。武器を持って仕事をしています。何か起きればこの武器を実際に使わなければなりません。そんなことがないよう願ってはいますが」。
警護のついていない収容者が、倉庫に食料を取りに行くために台車を引きながらわきを通り過ぎても、ポポワさんは動揺しない。その代わり、犬がすぐに反応して収容者に注意を向ける。「ここの犬は職員、一般人、収容者をしっかりと見わけます。服や袖章だけではなく、拘置所にいる人々には独特のにおいがあるので、そのにおいを嗅ぎわけるんです」。
犬好きでこの職場へ
ポポワさんには、ザラ、ムフタル、レッシ、ロルド、ヴェスタ、ブチェル、ブメルの7匹の犬の”部下”がいる。「ここには犬のために来たのです。この拘置所に知り合いがいて、求人について問い合わせるようアドバイスしてくれました。ここに来て、犬が大好きだと言ったんです。医療委員会、試験、教育などをパスするのに半年かかりましたが、その代わりこうやって好きな仕事をすることができます」。
当初、ポポワさんの親戚は新しい職場について心配していたという。「大事な孫娘が刑務所に行くなんて、と言って、祖母は泣きそうになっていました」。現在はそのような心配はしていない。男性の同僚が「女性の仕事じゃない」などと言って、女性として意識することはないという。拘置所の女性監視員は全体の半数ほどを占めているため、以前から女性の仕事となっているのだ。
ミス・テンダネス
エフゲニア・バスカコワさん =アンドレイ・ルダコフ撮影
「わたし自身も、母も、夫も、姉妹も監視ゾーンで仕事をしています」と、ウラジーミル州西部に位置するキルジャチ市の治療矯正機関職員であるエフゲニア・バスカコワさん(33)は説明する。専門はロシア語と文学の教師だが、学校で教えたことは一度もない。大学卒業前にここに来て監視のバイトを始め、そのまま残った。
ここは収容者の中で結核にかかった患者のためのコロニーという特別な場所で、多くの収容者は、結核以外にも肝炎やヒト免疫不全ウイルスなどの他の病気にもかかっている。ここにいる多くの人々は、絶望し、重いウツ病にかかっている。
バスカコワさんのふたつ目の専門は心理学だ。「武器や制服を身につけずに監視ゾーンに行きます。その方が相手を安心させます」。普段はズボンか長いスカートをはいている。治療矯正機関責任者のアンドレイ・ナザロフさんはこう言う。「バスカコワがミニスカートをはいて歩いたら、10人の警備員をつけなくてはいけなくなります(笑)。心理学実験所の上司が女性で良かったです。みんながより話したがりますから」。
心と身体を癒す
最近バスカコワさんが街を歩いていた時、一人の男性が近づいてきて話を始めた。「あなたを知っていますよ。コロニーでわたしを治療してくれました。どうもありがとうございました。あそこから出て結婚し、工場で仕事を始めました」。
バスカコワさんはロマンチックなピンク色のロングドレスを身につけて、美人コンテストに参加した。法律テストが一番うまくいったが、スポーツ競争でも特に問題はなかった。「定期的にスポーツをしています。ここでも週2回同僚と体育館に閉じこもって、音楽を流しながらフィットネスをしています」。
バスカコワさんは他の参加者と同様、小さな石のついたシルバーのピアスをもらった。このピアスを耳につけながら、汚れた水たまりを、そして監視塔と有刺鉄線のついている塀のわき、なぜか黒い丸屋根のついた小礼拝堂のわき、鉄格子のある窓から外をながめる絶望した病気の収容者のわきを、猫を胸に抱えて歩きながら、思いやりと理解のある、とても女性らしい仕事場に向う。
*記事の完全版(ロシア語のみ)
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