ロシアのソーシャルネットワーク

Vkontakte設立者のパーヴェル・ドゥロフ氏(27歳、左手)がWikipediaに100万ドルを寄付するとジミー·ウェールズ氏に語った=Getty Images / Fotobank撮影

Vkontakte設立者のパーヴェル・ドゥロフ氏(27歳、左手)がWikipediaに100万ドルを寄付するとジミー·ウェールズ氏に語った=Getty Images / Fotobank撮影

フェイスブックの新規株式公開(IPO)は大々的に報道されたが、ロシアのソーシャルネットワークは、本家の巨大なアメリカ企業を凌駕すべく、着々とトラフィック(データの情報量)を収入へ変換している。

ロシア的ノスタルジーを利用した21世紀型ベンチャー事業 

2006年、アルベルト・ポプコフという若い起業家は、一見逆説的なアイデアを思いついた。ロシア人のノスタルジックな傾向を利用して、21世紀型のベンチャー事業を立ち上げるというものだ。

彼は、ソーシャルネットワーキングを使って同窓生が一同に集うことができる「オドノクラスニキ」(ロシア語で「クラスメート」の意味)を設立した。設立後1年以内に100万人ものロシア人がこのサイトを利用し、30年前のサマーキャンプでテントを共にした友達や、昔の近所の友達と再会を果たすことができた。2008年には、ポプコフは「GQ」誌の「今年のビジネスマン」に選ばれた。

オドノクラスニキは、2008年7月までに、ロシア語圏から一日3000万回に近い訪問数を記録している。現在までその数に変わりはない。オドノクラスニキはロシアで2番目に人気があるソーシャルネットワークで、毎日3500万回の訪問数を誇り業界をリードするVkontakteのトップの座を奪うべく、優劣を競っている。

オドノクラスニキは成長を続けている。  同社は2011年の最初の3四半期で1億300万ドル(約82億円)におよぶ収益を計上し、4500万ドル(約36億円)の純益を確保した。

統合と協調が、今流行の合言葉であるようだ。

無料の音楽と高コストのスマイリー 

外部の投資家による完全吸収は、Vkontakte設立者のパーヴェル・ドゥロフ氏が何としても回避しようとしてきたシナリオだ。

ドゥロフ氏が2006年の終わり頃にVkontakte(「接触している」の意味)を設立すると、彼は、恥ずかしげもなくフェイスブックをまるごと模倣し、カラースキームまでそのまま盗用したという激しい非難を浴びた。

しかし、ドゥロフ氏はくじけずに独自の発想をさらに築き上げ、ユーザーに動画や音声ファイルの無料共有サービスを提供した。知的財産の盗用という避難が飛び交ったが、お構いなしのユーザーには無料のコンテンツが大人気だった。それは今でも変わらない。

Vkontakteのプレイリストは、特に10代後半から20代前半にかけての学生層に人気だ。音楽やビデオクリップはユーザーを誘い入れるだけでなく、そのまま彼らを定期的ユーザーとして保持する可能性を秘めているからだ。

2011年、平均的なユーザーによる1日の利用時間がオドノクラスニキでは340分だったのに対し、Vkontakteでは490分に達した。一方で、2年前に初めてロシア市場に本格的に進出したフェイスブックの1日の平均利用時間は、わずか30分だった。

フェイスブックは現在1400万人の登録ユーザーを擁していると推定され、異なるメディア、とりわけテレビを利用して、自社のフェイスブックアカウントについて宣伝したいビジネス経営者の間で人気だ。

5千ルーブル紙幣の紙飛行機 

ロシアの上級裁判所が、ファイルの無料共有とダウンロードは著作権侵害に当たるとの判決を下した場合、かつてのVkontakteにとっては問題となり得たが、現在ではすでに織り込みずみだ。

YouTubeの経験に倣い、著作権の保有者によるページ作成を推進すると共に、彼らが海賊版のコンテンツを削除することを可能にした。同時に6780ドル(21万ルーブル)の罰金も支払った。 

同社の2011年の収入は、前年比で41.7%増の1億600万ドル(約85億円)、純益が13.9%増の1660万ドル(約13億円)であったことを考えれば、この罰金は、懲罰という意味では、大海の一滴にすぎなかった。

この堅実な業績は、ロシア市場関係者が、著作権を侵害しながらも無料であるコンテンツを歓迎しているのが一因と説明できる。1万件の広告主が同ネットワークに登録しており、それぞれが平均で645ドル(約5万2000円)を前払いしている。アナリストは、Vkontakteの市場評価額は10億ドル(約800億円)を超え、ドゥロフ氏個人の資産は約2億6000万ドル(約208億円)におよぶと推定している。

昨年5月のある週末、彼は同社のサンクトペテルブルクにあるオフィスの窓から、無数の紙飛行機を飛ばした。それは5000ルーブルの紙幣を折って作ったものだった。

モバイルの未開拓分野 

ロシア語のソーシャルメディアは、フェイスブックが20%の市場占有率を獲得し、空前の競争激化の時代に突入したと言えそうだ。アナリストは、地元の2大企業は「成長の継続のために、登録ユーザーの一人一人を争って全面対決するだろう」と予想している。

オドノクラスニキとVkontakteの両社は、それぞれ海外進出の計画を発表している。オドノクラスニキは4月に、ウズベク語、アルメニア語、グルジア語、モルドバ語だけでなく、同社によれば100万人以上存在するアメリカ在住の利用者のための英語版を含む、現地語化バージョンの配信を提供すると発表した。

Vkontakteは、英語を含む70カ国語ですでに利用可能で、世界各地のユーザーによりなじみやすくするため、ブランドをVK.comへと改名した。

しかし、ロシア国内でも十分なチャンスがあるとポプコフ氏は言う。

「ソーシャルネットワーキングを普及させた最後の主要因はブロードバンドでした」と彼は回想する。「アクセス速度がより速くなると、携帯電話でも同じことが起きるかもしれません。誰であれ、最高のモバイルサービスを提供するだけの賢明さと行動の迅速さを備えた者が、おそらく勝者になるでしょう。その方法を知っていたら、私は今こうして取材になんか応じていませんよ。おそらくそのソースコードを書いているでしょうね」。