写真提供:コメルサント紙
先週ロンドンで、マルク・クルツェル氏が設立した、キプロス所在のMDメディカル・グループ・インヴェストメンツ(MDMG)の新規株式公開(IPO)が行われた。このグループ企業には、複数の婦人科の個人病院、病院、周産期センターなどが属している。当初、このプロジェクトはそれほど期待されていなかったが、ロンドンのIPOでは、この企業が投資家らに上限9億ドルと評価され、クルツェル氏は株式35%分の3億1100万ドルを受け取った。
「ロシアの民間医療は、現在の市場で最もおもしろい分野です。所得税はゼロにしてもらいましたし、質の高い医療サービスに対する需要は非常に大きく、利益率もとても高いです。国は初めてわれわれに、意義ある支援をしてくれるようになりました」とクルツェル氏。
婦人科医の二重生活
MDMGは2010年に設立されたが、クルツェル氏が民間事業を始めたのは1990年代初めだ。アカデミー会員で、小児血液学・腫瘍学・免疫学センターの所長を務めるアレクサンドル・ルミャンツェフ氏はこう話す。
「ほかの優れた医療関係者と同じく、マルクは早期に、患者に対する医療サービスが著しく不足していることを理解し、まず病院ではなく家での診療の資金を探しました。そして数人の仲間とともに、このような医療サービスを立ち上げたのです」。
クルツェル氏は現在でも医療活動に全力を注いでいる。「人生をずっと医師として過ごしてきました。毎朝7時に手術室にいて、夜中にはひんぱんに出産に立ち会っていて、今でも事業は大きくなりましたが、ほとんどの時間は医師です」とクルツェル氏は言う。
「需要は巨大だが、リスクを怖がる」
1990年代半ばに同氏は、妊婦と新生児の数年間の観察という新しい事業コンセプトを作成し、2000年代初めにはこのコンセプトが「母と子」医院ネットワークの基礎となっていた。その後周産期センターを建設し、これらで得た利益を、母と子以外の老若男女も診察できる病院を建設するという3つ目の事業に活用することにし、現在工事が進んでいる。
「なぜだれも個人産院を建設しなくなったのでしょうか。非常に責任が重いので恐れているんです。分娩中またはその前後に何も起こらないようにするには、とにかく分娩台に気合を入れて立つことです。私のところのすべての医師について、確固たる自信があります」とクルツェル氏。
急成長する露民間医療市場
今年はロシアの民間医療にとって最高の年だ。他の複数の企業も本格的な投資の呼び込みに成功しているが、どの企業にとっても初めての試みだった。
晩春に、 国際金融公社(IFC)が3500万ドルで公開株式会社メディツィナの6%を取得したが、その1ヶ月前にはベアリング・ボストーク・キャピタル・パートナーズが1億ドルでヨーロッパ医療センターの27%を取得した。
また同時期に、ロシアの民間医療市場のリーダーであるメドシも投資家を見つけた。もっともそれは民間ではなく、国営単一企業「モスクワ市長・政府運営医療センター」だったが。この提携はメドシにとって、資金面で有利であるのみならず、病院もこの医療センターから与えられることになった。
ライバルは闇市場
専門家によると、2012年の民間医療市場は20%増となり、この先数年間は同様の成長が見込まれるという。
「民間医療市場の資本化はすでに数千万ドルに達しており、ポートフォリオ投資家はこの分野の将来的な成長を明らかに見込んでいます。成長の重要な要因となるのは、個人医院が義務医療保険の保険証書サービスを行える、保険システムの改革で、実現すれば市場をさらに活性化します」と、「ロスナノ」の大規模医薬品プロジェクト2つを管理する、チーム・ドライブ社のウラジーミル・グルドゥス最高責任者は確信する。
専門家は、有料医療の主なライバルは、市場参入者ではなく、患者から賄賂を受け取る総合病院の医師だと考える。このような賄賂は、年間数億ドルにものぼると試算されている。
「民間医療市場の将来性は高いが、闇市場が障壁となっています。賄賂の額は事業の額と同等ですから。保険システムの改革が行われれば、一般の患者でも有料の医療サービスを受けられるようになるので、状況は変わるでしょう」と、内視鏡外科手術・砕石術センターのダヴィド・ドゥンドゥア最高責任者は考える。
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