インタビュー:社会学者ウラジーミル・ペトゥホーフ

タス通信撮影

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ロシアで知事公選制復活後、初の首長選挙が5つの地方自治体(連邦構成主体)で行われた。社会学者ウラジーミル・ペトゥホーフ氏(ロシア科学アカデミー社会学研究所付属総合社会調査センター所長)は、国民の国家および政権に対する考え方と行動は、この7年間で著しく変わったと確信している。

―知事公選制が廃止されて7年になりますが、この間、一般国民の意識はどれだけ変わったのでしょうか? 

復活した知事選

10月14日、ロシアで統一地方選挙(知事、市長、地方議会の各選挙)が、5つの地方自治体で実施された。今回の選挙は、7年前にロシアで知事公選制が廃止されて以来、初の知事選となったが、政権への不満と批判が高まっているにもかかわらず、選挙結果では、ほぼすべての自治体で与党「統一ロシア」がリードし、5つの自治体のいずれでも、与党の推薦する現職の知事が勝利した。とくにブリャンスク州とリャザン州では、政権にとって厳しい状況が予想されていたが、60%以上の得票率で、2位以下に大差をつけた。

国民の国家および政権に対する考え方と行動は、この7年で著しく変わりました。混乱していた90年代の終わりから2000年代の半ばにかけては、国民は主に、「国家の復活」を求めていました。せめて、経済、社会的な領域で、国家が機能するようになってほしい、ということですね。

ところが、00年代の半ばに、一連のテロ事件が発生し、いくつかの社会保障が廃止され、金銭で“補償”されるといったことが起こると、それまでに構築された国家体制に対して、疑念が初めて生まれました。

ただ、この当時は、こうした不満の兆しは、多くの国民の生活水準が好況のおかげで向上したことで、相殺されていたのです。国民と国家との関係は、「不干渉のかわりに忠誠」という原則のうえに成り立っていました。つまり、国は自分のやることをやるがいいが、俺たちの邪魔はしないでくれ、というわけです。

 しかし、2010年の夏までに、水力発電所の事故など、いくつかの大事故、事件が起こると、多くの人が、これ以上傍観者でいるのはまずいな、と悟ったわけです。これには、国が不干渉の不文律から逸脱し、国民の個人生活に次第に容喙し始めたことも手伝っていました。一例として、徐々に学校に宗教教育が盛り込まれるようになってことを挙げることができます。

社会学的調査によると、国民は獲得したプライバシーの権利をたいへん尊重しています。どこで働くか、どこに住むか、どこへ行くか、何を話すか、どんな映画を見てどんな本を読むか、何を子供に教えるか、こういったことを全部自分で決めることが、すごく大事だと思っているのです。

―あなたは、00年代には国民は、強い権力を求めていたとおっしゃいましたが、今は何を求めているのでしょう? 

基本的に4つあって、これらの要求はとても根強いです。①効果的な政府、②法の前の平等、③個人生活の自由、④社会的公正―この4つですね。ほとんどの人が同じことを求めています。違うのは、これらの目標を実現する方法だけですね。ある者は民主的な方法で、ある者は“締め付け”によって、という具合です。

 

―国民は自治体政府には何を期待しているのでしょうか?

最近、多くの人が、政治の“テコ”はモスクワに集中されていることを悟りました。決定はすべであそこでなされる、と。ですから、誰が知事になろうと、あまり関心がありません。人々は、知事は言われたことをやるだけだと承知していますからね。もちろん、個々の知事によって、人々の態度も変わってきますが、全体としては無関心です。

しかし、この現象にはもう一つの面があって、それはとても有益なものだと思うのです。つまり、溺れる者が助かるか否かは、その溺れる者しだいだ、ということを理解する人がどんどん増えてきていることです。これは市民の行動の活性化をうながします。人々は、自分たちの住む家の裏庭でも、通りでも、建物でも、もし自分の力で何もしなければ、何も変わりはしない、と悟ったのです。

 

―人々はほんとうに知事に何の期待ももっていないのでしょうか? 

我々の調査結果では、国家のあらゆる機関に対して信頼が低下しています。大統領、政府、自治体政府、裁判所、警察、国会―すべてに対してです。知事への信頼度は、この4年間で10%下がりました(2008年の48%に対し、2012年は38%)。これと並行して、他の昔からある組織への信頼度も低下しています。政党や労組などですね。

こうして人々はある結論を得たのです。政権との対話は、仲介者ぬきで直接やらねばならない、と。それで人々は街頭に出て抗議行動を行うようになりました。社会は、かつてはおとなしく請願していたのですが、今や厳しく要求を突きつけるようになりました。断固たる行動で自分の利益を守ろうとする人の数は増えています。

*元原稿