やはり強い米ドル

ナタリア・ミハイレンコ

ナタリア・ミハイレンコ

ユーロ圏の危機や「アラブの春」などにより、昨今の世界の外貨や通貨事情は大きく変化しているように見える。世界の基軸通貨といわれる米ドルの地盤沈下が指摘されてから久しい。ところが、どっこい、外貨準備高についても投資通貨の番付表を見ても、米ドルの力はあまり落ちていないようだ。こうした事情を証券や投資の専門家に詳しく論じてもらった。

ユーロを覆う不安感 

直近のIMFデータは世界の外貨準備構成が徐々にしか変わらないことを示している。

全世界の総外貨準備の62%を占める米ドルは、現在のところは主導的な準備外貨としての地位を保持しているが、明らかに下降の傾向をたどっている。

ユーロ圏の危機により、ユーロに割り当てられた額は少し減ったものの、それほどではない。ユーロの準備額は依然として25%をわずかに下回るレベルだ。 現在も進行中の危機によって生じた通貨同盟の将来をめぐる不確実性は信用の喪失につながっており、これはユーロに対して周期的にかかる圧力にも反映されている。

信用の喪失は、「南」の銀行から「北」という安全な避難場所への預金の急激な移動を見ても明らかだ。

世界の外貨準備の将来的な展開についてはこの先、負債と銀行の危機を解決できるかどうかの大部分がユーロ圏の政策立案者の能力にかかっている。

しかし、ソブリン債の問題はユーロ圏に限られているわけではない。米国は財政状況が不安定で、国内総生産(GDP)に対する連邦政府の債務割合が1950年以来最高レベルとなる73%であるため、深刻な課題に直面している。

通貨同盟が破綻した際に投資家が即座に直面するリスクは、新たな貨幣の導入である。その可能性は、通貨同盟がどの程度崩壊するかによる。少数の国しか離脱しないなら、ユーロは継続する。ギリシャがドラクマを再導入すれば、おそらく大幅に下落するであろう。

一方、この伝染が広まれば、スペインやイタリアなど他の国が離脱する可能性もある。そうなるには、政治的な破綻(あるいはユーロ離脱を掲げ、選挙で明白な国民の支持を得た新政府)が生じることが必要条件となる。

もしスペインとイタリアがユーロを離脱した場合、ユーロの生存能力に疑問が生じ、ユーロがドイツを主導的メンバーとする北方ブロックの通貨になる可能性がある。

ルーブルに存在感

ルーブルが世界経済において果たす役割が増加する可能性もある。我々はルーブルがこの先数年で地域的な準備通貨になるための前提条件が整ってくると見ている。ロシア経済は2008年から09年にかけての危機以来、3~5%と小幅ながら持続可能な成長率を維持してきた。

ロシアの債務はG20諸国の中でも最も低レベルに抑えられており、GDPに対する債務の割合は10%にすぎない。そのほとんどはルーブル建てのものだ。

ルーブルの重要性が高まっているのはロシアが投資対象国として魅力的である表れである。これはユーロ圏の諸国が現在直面している難題と比較すれば、特に明らかである。 

ニコライ・ポドグゾフ、VTBキャピタル確定利付証券部部長  

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スイス・フラン有望 

米ドル、ユーロ、日本円を除く世界の通貨番付は2008年のリーマン・ショック、ユーロ圏の動揺、「アラブの春」を経た後では何らかの変動が不可避だ。投資家のための通貨番付を考えてみよう。

外貨市場のプレイヤーは主に3つの基準から通貨を評価しようとする。①影響力②安定性③将来性の3点である。

③の将来性に関しては、まず比較的「小さな」通貨が考えられる。

つまり、世界の主要な政治的リーダーたちとあまり関わりをもたず、世界の潮流から影響を受けずに、独自の経済政策をとれる国の通貨だ。スウェーデン、スイス、カナダ、オーストリア、ニュージーランドなどの通貨、それに香港ドルなどがこれに当たる。 3つの基準をすべてクリアしている通貨はというと、スイス・フランしか残らなくなってしまう。

スイス・フランはスイス経済の規模にかなりしばられているので、米ドルに取って代わることはできない。

ルーブルの力に限界

ロシアのルーブルに関しては、様々な議論がなされ、それらはしばしば真っ向から対立している。

多くの投資会社や銀行(特に国営銀行)はルーブルを買うようすすめるが、私はあまり賛成できない。ルーブルに「独自のコンセプト」があったり、自分なりの強みを出せるとは思えない。

ルーブルは特にエネルギーの市場に強く依存している。つまり、米ドルに依存しているということだ。

ルーブルが買われるケースとしては次の二つがある。①世界経済が成長し、景気が良くなる②ドル、ユーロその他の主要通貨が安くなる。

しかし、①のケースは、現在のところ誰も信じていないようだ。②のケースが起こった場合には、ロシア政府は直ちにドルとユーロの下げに合わせてルーブルを切り下げるのが慣例だ。

肝心なのは、ロシアは大量の国債を発行することはできない点である。ということは連邦予算と年金基金の穴埋めには、ルーブルを切り下げることしか切り札はないということである。

では、手持ちのルーブルはどうしたらいいのだろうか?どんどん使ってしまうことだ。 忘れてはならないのは、米ドルは依然として基軸通貨であり、米国からの投資は世界中で行われており、米国は世界最大の消費国であるということだ。

また人民元も、中国の世界経済への圧倒的な影響力を背景に、外貨市場では米ドルと並んで強い。

不確実性の時代には、投資家は最も強く、流動性のある通貨を好む。ゆえに、投資のための通貨番付は、上から①スイス・フラン②米ドル③人民元、の順番となる。

スタニスラフ・マシャギン、資産運用会社「パーソナル戦略」共同経営者