賢い人が今カッコイイ

アリョーナ・レプキナ

アリョーナ・レプキナ

いかに自分を賢く見せるかというのが、今秋の流行になっている。たとえそれが見せかけだけのものでも、何もしないよりはいいじゃないか。

二つの“コーエン” 

8年ほど前の流行といえば、初秋のバーゲン、おしゃれなクラブへの出入り、テレビへの出演だった。これはマジなトレンドで、アパートの賃貸のような日常の問題は二の次だったのだ。

ところが、今年20歳になるイリヤは、「モスクワのどの”講演”に行ったらいいかな」と、ぜんぜん別種の質問を私に投げかけてきた。これは、もうひとつの「賢くなるにはどの”公園”に行くべきか」質問とセットになっている。

どういうことかというと、モスクワにあるゴーリキー公園は単なる公園ではなく、流行に敏感な人々や流行仕掛け人が集う場所となっていて、現在流行している服、行動、議論のテーマ、遊びなどを知りたくなったら、この公園に行けばすべてがわかるようになっている。

例えば今、芝生の上でピクニックをするのは、レストランで食事をとるより流行っていること、自転車が自動車より流行っていること、ボランティアで誰かを助けてあげるのが流行っていること、などがわかる。

講演会で賢い女の子をナンパ 

公開講演会はソ連時代にも、ソ連崩壊後にもあった。ただ、「15世紀イタリアの芸術派、フェラーラ、ボローニャ、ベニス」の講演会を聞きに行って、元気なおばあさん数人と並んで席に座ることと、詩人兼作家ブィコフのブーニンに関する講演会(ブィコフは反体制派指導者として、現在大変な人気を誇っている)を聞きに行って、ピンクのスニーカーとグリーンのジーンズを身につけ、アイパッドを持っている可愛い女の子に囲まれて席に座ることは、まったく別物だ。

現在の公開講演会とは、最近生まれた新種のもので、講演者の名前はその経歴よりも重要なのだ。講演内容はインタラクティブになり、講演者は好きなテーマを選べる。現在の講演ビジネスとは、「作家が書いて、出版社が出版する」という原則のもとで仕事をしてきた人が消えている、書籍出版ビジネスに似ている。

モノ金のあとは知的満足が欲しい 

講演の流行には、それなりの政治的、経済的理由がある。

例えば、消費時代が終わり、知的満足への需要が生まれたという考え方がある。最初に富裕層の間で、未知の情報を知ろうという動きが始まった。知り合いのサンクトペテルブルクの歴史学者は、個人の講演会でかなり稼いでいる。依頼側の負担でモスクワまで飛行機で移動し、高級車の出迎えを受け、郊外のヴィラで何人もの大富豪とその家族を相手に終日ピョートル1世やエカチェリーナ2世について話をし、その後豪華な食事がふるまわれ、高級車で空港まで送ってもらう。この講演料は10万ルーブル(約25万円)単位だ。

その他の人気の理由は、リーダー(電子書籍)や文章のデジタル化の時代が到来して、図書館が衰退したこと。作家と実際に会ったり、マスター・クラスに参加したり、講演に行く以外の目的で図書館に行く意味がなくなってしまったわけだ。

“図書館クラブ” 

新たな図書館クラブの原則で営業しているのは、サンクトペテルブルクのマヤコフスキー図書館などで、大型書店「モスクワ」から、サンクトペテルブルクの知的な書店「ボルヘス」まで、さまざまな書店がこれに続いている。

ロシアのビジネスは商品販売技術を開発し、知的商品の販売にまで達した。とにもかくにもこの知を求める流行が、成長を続けて行くことは確かだ。流行に敏感なイリヤは、正しく風向きをとらえたわけだ。

ドミトリー・グビン氏は、ロシアのジャーナリスト、テレビの司会者、GQ誌、アガニョーク誌、コメルサント紙のコラムニスト、独立ラジオ放送基金の「新ロシア・メディア」プロジェクトの責任者。

アガニョーク誌の抄訳