二人のキャプテン

ヴェニアミン・カヴェーリン著、入谷郷訳、郁朋社

刊行:2012年

 初期の「師匠たちと弟子たち」、晩年の「地図にない町で」、「ヴェルリオーカ」と幻想文学だけが邦訳されていたベニアミン・カヴェーリン (1902~89)だが、代表作の「二人のキャプテン」が突然、姿を現した。

 北極海で消息を絶ったタターリノフ船長。少年サーニャは、遭難の黒幕が校長のニコライであることを知る。真相解明の試みは挫折するが、成長したサーニャは北極海の対独戦に参加し、そして……。

 第2次世界大戦中に発表された社会主義リアリズム文学だから、ファンタスティックな要素を期待してはいけない。だが、ここに記されているのはやはり、夢を信じる不屈の心である。当時のソ連で憧れの的だった飛行機や極地探検が扱われているのも、文化史的に興味深い。