学術都市「スコルコボ」の建物が完成

ボリス・ベルナスコーニ氏が設計した「Hypercube(超立方体)」 =Press Photo撮影

ボリス・ベルナスコーニ氏が設計した「Hypercube(超立方体)」 =Press Photo撮影

ボリス・ベルナスコーニ氏が設計した、学術都市「スコルコボ」最初の施設となる「Hypercube(超立方体)」は、カナダ映画「キューブ2(Hypercube)」を見て着想したのかもしれないが、この映画の不気味な立方体とは異なり、来る人を温かく迎え入れる建物に仕上がった。しかも、ロシア版シリコンバレーを目指すスコルコヴォの“入れ物”にふさわしく、あらゆるハイテクが高密度に駆使されている。

当初の原則である、建物の正方形のイノベーティブ・ソリューションにこだわった、内装や外装の徹底した厳格さは、変わらずに残されている。「スコルコボ」センターの最重要プロジェクトとして、ハイテクは最大限に活用されなければならないのだ。

4Eのコンセプトと外部ライフラインからの独立 

「超立方体」は、エコノミチノスチ(節約型)、エコロギチノスチ(環境に優しい)、エルゴノミチノスチ(人間工学的)、エネルゴエフェクチブノスチ(省エネ)の「4E」のコンセプトにもとづいて建設された。

建物の主な特徴は、外部のライフラインからほぼ完全に独立している点だ。外部からは、電気しか供給されず、壁の一面には太陽電池も設置されている。太陽電池で得られる電力では、夜間に1階~2階の照明を確保できる程度で、建物全体をまかなうことはできないため、外からの電力供給も必要なのだ。

独自の暖房、給水システム 

暖房には地熱ヒートポンプと特別な天井スプリット・システムを利用するため、通常ロシアの建物内部で見られるセントラルヒーティングは置かれていない。

給水方法も独特で、アルトワ式井戸(自噴井戸)から水が供給され、使用後の排水は浄水装置を通じて木や芝生の散水に使用される。

ゴミは都市ガスに変わる 

窓は特大の大きさで、日中の太陽光を最大限に活用できるようになっている。ロシアでは、通常このようなサイズの窓は、高価な、暖房された空気を奪ってしまうと考えられ、使われることはないが、ここでは、特別な対流式暖房器が温かいエアカーテンをつくるため、建物内部の温度は常に一定となる。

また、特別な天窓もあるため、建物中心部には太陽光が差しこむようにもなっている。

ゴミはここで処理してそこから都市ガスを生成するという、非常に賢い方法を採用している。

超巨大スクリーン 

建物の外観もおもしろい。コンクリートとガラスでできた建物のまわりには、ステンレス製の網が張りめぐらされていて、建物を大きなスクリーンに変えてしまう。

この網には、さまざまな映像のプレゼンテーションや、学術都市の住人に対する連絡事項が表示できるようになっている。

「スコルコボ」事務局の最高責任者であるアントン・ヤコヴェンコ氏は、次のように語る。

「『超立方体』はこの学術都市で最初の建物です。野原の真ん中に立っているので、独立した建物のすべての技術的ソリューションは、ここでの生活条件に合わせました。建物のつくりは、外装でも内装でもできるだけ簡素なものとし、内部は明確に区分わけして、壁には装飾を施さず、むき出しのコンクリートのまま残すことにしました」。

「超立方体」の住民は 

7階建ての建物の1階には、受付とカフェがある。2階には、「スコルコボ」の重要なパートナーであるIBM、シスコなどの国際的な大手企業が入り、3階には、「スコルコボ」基金が支援する、イノベーション・プロジェクトを開発する企業が入る。4階は丸ごと大きな会議場となっていて、あらゆる形態の会合に合わせて会場を変化させられるようになっている。残りの5、6、7階には、「スコルコボ」関連プロジェクトを立ち上げる企業が入ると考えられている。

「スコルコボ」のマクシム・キセリョフ所長は、次のように説明する。

「『超立方体』は、さまざまな会社で働く人の事実上の大きなショールームとなるため、多くの会社にとってとても重要な意義を持つ施設です。この建物やインフラは、革新的かつ広大な土地の条件にもとづいてつくられており、『スコルコボ』のエコシステムの見本となるべきです。『超立方体』には、外国の高官、世界的な投資グループの代表者など、VIPが将来的に訪れることとなります。ここの住人は潜在的な自分の投資家と会えるのですから、住人にとって貴重な機会です」。

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