北極の氷が溶ける

=Alamy/LegionMedia撮影

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北極圏の氷は急速に溶け出している。数年経つと、北極海の海面の氷は7~8月には消えてしまうとの説もある。氷が溶ければ、石油・ガスの採掘が容易になるほか北極海航路の活用などロシアにとって好ましい事態も予想される。その一方では、極北の「宝」となった地下・海底資源をめぐる各国間の対立が紛争にエスカレートする可能性も否定できない。

ロシア科学アカデミー海洋学研究所のミハイル・フリント副所長によると、最近30年間で夏季の北極圏の氷層は23~27%減り、この5~7年でカラ海の氷塊の端は、8月には海岸線から700~800メートルも遠ざかるようになった。

また、イギリスBBCによると、北極研究の権威であるピーター・ウエドへムス・ケンブリッジ大学教授は最近30年の傾向から、2015~16年の夏季には北極海の海面の氷は完全に溶けてしまうと考えている。

 1万4000キロ

サンクトペテルブルクからウラジオストクまでの北洋航路の距離。スエズ運河経由では2万3000キロメートル以上。

氷が溶け出している理由では「温室効果」や「自然な気候変動のリズム」などの説がある。

1970年代から西シベリアのツンドラは平均気温が1度しか上がっていない。新たな超低温技術のおかげで、永久凍土に作られた施設は、たとえ気温がプラス30度になっても稼動するようになった。

氷が大規模に溶けると、石油・ガスの採掘が陸地でも大陸棚でも容易になるほか、欧州とアジアを結ぶ最短ルートである北極海航路が年間を通して使えることなどロシアにとって有利な面がある。

だが、北極圏には採掘可能な石油・ガスの約22%が眠っている、というデータもあるように各国は北極圏の資源に目をつけている。

いち早く開発を始めたのはロシアだ。国営天然ガス企業・ガスプロムはプリラズロムナヤ・ガス田でボーリングを開始した。

 34隻

2011年に北洋航路を航行した商船。スエズ運河は1万8000隻。

ロシアの北極圏での開発が気に入らなかったのはグリーンピースだけではない。

温暖化が進むに従って、北極圏への関心は国益がからむだけに、緊張をはらみながらますます高まるのは必至だ。数年後には北極圏での紛争・衝突は日常茶飯事となるかもしれない。

カムチャツカにハブ港

カムチャツカ地方政府は不凍港のペトロパブロフスク・カムチャツキー港を年間貨物取扱量5000万トンの国際ハブ港にする方針だ。漁業と太平洋艦隊の基地である同港は物流の面でも地域経済の支柱になる可能性がある。

北欧と環太平洋地域をつなぐ最短ルート、北極海航路を利用した貨物輸送が急激な勢いで発展しているため、地方政府の方針は十分に実現可能だ。
白海に面したアルハンゲリスク市で8月中旬開催された、亜北極域・北極帯商工会議所協会・ビジネス・サミットで、北方商工会議所のアナトーリー・グルシュコフ会頭は次のように説明した。「北極海航路経由の船便の増加と規模は一目瞭然だ。2010年は11万1000トンだった貨物輸送量が、11年には82万800トンに急増した。今年、ロシア海運はさらに増大すると予測している」。

ロシアの北極海沿岸を通過する貨物の輸送量が急激に増加したのは、主として国内最大の独立系天然ガス生産・販売会社「ノバテク」一社が奮闘しているからだ。

 82万800トン

2011年の貨物輸送量

同社の天然ガス・コンデンセートを積載したタンカーが昨年、北極海航路を何往復もしたため、ムルマンスクと環太平洋諸国間の貨物輸送量や通過速度が次々記録を更新することとなった。ムルマンスクは、バレンツ海に面する都市で、北方艦隊の基地がある。

「ノバテク」のヤマル半島の液化天然ガス(LNG)・プラントが開業すれば、北極海航路経由の同社の貨物輸送量は、20年までに年間1500万~1600万トンに拡大する可能性がある。

ロシアは7月末、1990年代初めに定められた北極海航路水域の商船法を改正した。今後、北極海航路水域の統一管理システムをつくり、航海の安全確保、砕氷船による護衛などを含む、北極海での安全航行を可能にする近代的インフラを構築する。

北極海航路の整備はすでに始まり、ロシアのグロナス(GLONASS、全地球的航法衛星システム)が利用される。

さらに、アイスベルグ中央設計局では北極海で最も氷の厚い海域を航行できるような新型原子力砕氷船「リーデル」を設計している。厚さ3・5㍍ほどの多年氷に覆われた航路でも航行が可能で、近く北極圏の大陸棚や沿岸の油ガス田からの輸送を始める予定である。