サミット・ホスト国としてのロシア

ウラジオストクでのAPECサミットの閉会式の花火 =ヴィタリー・アンコフ/ロシア通信撮影

ウラジオストクでのAPECサミットの閉会式の花火 =ヴィタリー・アンコフ/ロシア通信撮影

向こう3年間、ロシアは現在開催中のアジア経済協力(APEC)首脳会議に続き、 2013年にサンクトペテルブルクでG20、そしてG8と、3つのグローバルなサミットで議長国を務める。これは、世界に対してロシアに有利なプログラムを提示するユニークな機会となろう。

議長国のメリット 

サミットでホスト国を務め、国際的機関で議長国になることは、金はかかるが、まんざら無意味でもない。議長国は、すべての参加国に対して、話し合いの方向を決めて提示することができるからだ。

  例えば、かつてアメリカは、核兵器の処分に要する費用の一部を、他の先進国にまかなわせるよう説得できた。

スペインは、欧州連合(EU)議長国だった1990年代半ばに、地中海統合のプロセスを始動させた。そのおかげで、スペインは、EU内でこの地域の代表格になった。

ロシアで開催されたサミット 

しかし、ロシアはこうした議長国の利点をまだ十分活用できていない。

1991年のソ連崩壊以来、今回のAPECに匹敵するようなサミットはあまり開催されていない。これだけの数の首脳が一堂に会したのはわずか数回だ。

1996年の核兵器安全保障サミット、2003年のサンクトペテルブルク建都300周年に同市で開催されたサミット、2005年5月9日の第二次大戦勝利60周年記念式典、そして2006年のG8サミット、これだけだ。

90年代の状況 

1990年代、世界のなかでのロシアの立場は苦しかった。2度のチェチェン紛争、エリツィン大統領(当時)の地に落ちた支持率、赤字予算とかさむ国債発行…。

こうした状況にあって、ロシアが提示できる議題はといえば、まだ同国が世界で影響力を残していた分野に限られた。つまり、核兵器の安全保障問題だ。G7にとっては、この問題は、旧ソ連圏の原子力とともに、切実な問題であり続けたからだ。

また、G7首脳がロシアを訪問することは、エリツィン大統領に支持を表すことにもなった。彼らにとっては、まだロシア国内で人気のあった共産党指導者よりもエリツィン氏のほうが好ましく思われたわけだ。

 規模だけは大きかった2003年のサミット 

その次ぎの大規模なサミットは、2003年5月に、プーチン新大統領のもとで、サンクトペテルブルク建都300年を記念して開かれた。

このときは、ロシア・EUサミットと非公式のCIS(独立国家共同体)サミットが行われ、さらに米国、日本、中国、インドの首脳が訪れて、規模はロシアで過去最大となった。

当時のロシアをとりまく状況は、1996年よりはましだったが、理想的というにはほど遠かった。ユーゴスラビア紛争が終わってから4年しか経っておらず(この問題をめぐり、ロシアと欧米は激しく対立した)、アメリカがイラク軍事介入に踏み切ったのは、わずか3ヶ月前のことだった。

対立の記憶はまだ生々しかったが、それでもお祝い気分に水をさすことはなかった。ロシア政府は初めから、何らかの共通の決定にこぎつける気などなかったからだ。

 2006G8サミットの教訓 

ロシア初のG8サミットは、2006年にサンクトペテルブルクで開催された。世界政治の場で、公然と独自の役割を標榜したのも初めてだ。優先議題としてロシアが提示したのは、エネルギー安全保障、教育、伝染病対策の3つだった。

ロシアは、それまでとくに世界の教育問題や健康増進に積極的だったわけではなく、このときも主に関心をもっていたのはエネルギー問題だった。

このサミットの主たる教訓は、ゲストを招き、自分に興味のある議題を示すだけでは、真の成功とは言いがたい、ということだった。

肝心なことは、自分にとってだけでなく、他の参加国にも面白くまた利益になる議題と解決策を示すことである。

APECで過去の教訓が生かせたか? 

とにもかくにも過去20年間でロシアは、サミットでの経験を積み重ねてきた。ロシアはAPECで議長国を務めるに当たり、今度は初めて、過去の議長国(とくに日本と米国)の経験を詳しく研究し、すべての参加国の利害を分析した。

  Ernst & Young社、「マッキンゼー」社( McKinsey)、プライスウォーターハウスクーパース社(PricewaterhouseCoopers)などとコンサルティングを行い、共同で地域全体に興味あるような提案を練り上げた。

 APECサミットの結果が、その成果を示してくれるはずだ。ロシアの政官界が、ソフト・パワーを身につけることができたかどうかを。

以下の記事の抄訳

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