=ロシア通信撮影
祖国戦争勝利200年を祝い
赤の広場で開幕式が行われ、集まった人々の前で華麗で劇的な演出が繰り広げられた。今年のテーマはナポレオンの「大陸軍」撃退200年。1812年、フランス帝国のナポレオン軍がロシアに侵攻し、激戦の末、ロシア軍は勝利した。
それに因んで、開幕式はこの祖国戦争時代をほうふつとさせるような、19世紀の貴族の舞踏会から始まり、軍隊の代わりに軍楽隊が、武器の代わりに楽器を手にして登場した。
クレムリンの壁のわきで2時間に渡り、ロシア、ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、ギリシャ、中国、カザフスタン、ポーランド、シンガポールからの参加者による、軍隊行進曲、クラシック音楽の楽曲、連隊歌、国の音楽が鳴り響いた。
映画音楽やロシア民謡で観客熱狂
鮮やかなチェック柄キルトの制服を着たEU諸国の混成吹奏楽団員が現れると、赤の広場はスコットランドとアイルランド風の彩色に満ち溢れた。ギリシャの空軍楽隊員は、「インディ・ジョーンズ」、「スター・ウォーズ」、「ロッキー」といったヒット映画のテーマ曲を見事に演奏した。
観客が特に沸いたのは、イタリアの憲兵楽隊が有名な「カチューシャ」を、ポーランドの軍楽隊が世界の誰もが知っている「カリンカ・マリンカ」を演奏するなど、外国の軍楽隊がなじみのロシアのメロディーを奏でた場面だった。感動したロシア人は、ただ拍手をして指笛を鳴らしただけでなく、今にも踊りだしそうな雰囲気で、足を踏み鳴らしてリズムを取っていた。
恒例のミレイユ・マチューさん
今年の「スパスカヤ塔」で、最も重要な参加国のひとつとして大歓迎されたのは、ナポレオンの祖国フランスだ。ナポレオン軍の魂を伝えようと、当時の制服に身を包んだ軍楽隊が赤の広場に現れ、同時にロシアでも人気の高いフランス人歌手のミレイユ・マチューさんが、黒いドレスを着て登場し、秋の空にロシアの国家、ラ・マルセイエーズ、フランスの国家を歌い上げた。ミレイユ・マチューさんは毎年参加しており、フェスティバル関係者の間では、「スパスカヤ塔」のタリスマン(不思議な力のある人、お守り、の意)と呼ばれている。
軍楽隊がパレードする、軍楽パフォーマンスやフェスティバルは、世界中で行われている。初めてのパレードは、1880年にロンドンで開催された国王トーナメントで、イギリス皇室の軍楽隊が演奏した。第二次世界大戦後、このようなフェスティバルが他の国でも伝統的に開催されるようになった。今日、さまざまな国の軍楽隊が、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、フランス、ベルギー、イタリア、スイスなどに定期的に集まっている。
ロシアでは、2006年9月2日に、「モスクワの日」の祝賀記念として、各国の国家元首の警備隊が軍楽隊を引き連れて、軍楽パフォーマンスを行ったのが初めてだ。開会式の最後は意外な演出となった。フェスティバルの美術主任である演出家ミハイル・シェミャキンさんは、外国人参加者が気分を害することのないよう、「戦争の勝利を強調しすぎないようにするのが難しかった」と打ち明けた。その結果、勝利のテーマを、世界の平和、友好、統一に変更し、燃やされたたいまつのもとに、フェスティバルの参加者全員が集まり、フィナーレを飾った。
「さまざまな立場にある参加国が、この平和のたいまつのもとでひとつになるのです」と、このアイデアを提案した、ロシア国防省軍楽隊のワレリー・ハリロフ隊長は、事前に記者団に説明していた。
平和と友好のために
「このフェスティバルの意味ですか。我々にとっては、ロシアとフランスの再結束ですよ。平和と友好のね」と、フランス・アグノー市のファンファーレ・バンドのティエリ・モーシュさんはロシアNOWに語った。
イタリアの憲兵楽隊のマッシモ・マルティネッリ隊長も、「スパスカヤ塔」が参加国と参加者の距離を近づけていると考える。「さまざまな国の参加者が集まって、それぞれの国の特徴や国の音楽の特徴をパフォーマンスで示すのです。参加国の国民の関係を近づけることのできる、他にはない機会です」。
「シンセサイザーや新しい技術が駆使された楽器に溢れた現代では、吹奏楽や軍楽は時代遅れだと感じる人もいるでしょう。でもそれは違います。このような音楽は、人々の心に響きます。吹奏楽は、現代的な船が停泊する埠頭に、帆船が入港するようなものです。帆船は美しくてロマンティックなので、古くても注目を集めるのです」とクレムリン警備司令官のセルゲイ・フレブニコフ中将は語った。
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