医師との散歩

「医師との散歩」とは、モスクワ西部のクルィラツコエ丘陵公園で休日ごとに行われている30分間の健康増進アクションのこと。「ロシアNOW」はこのアクションに参加して、ロシアで最も著名な心臓専門医レオ・ボケリア氏と一緒に「散歩」してきた。

休日の早朝にもかかわらず、公園には「医者との散歩」への参加希望者が、100人以上集まった。バクレフ記念心臓血管外科研究センター長で、ロシアの心臓専門医の重鎮である医師・レオ・ボケリア氏が語ってくれた話によれば、休日の早朝に起きることは、同氏自身にとってさえ偉業そのものだとのこと。それでもボケリア氏は、もう8週連続で、土曜日に、モスクワ市民との30分散歩に参加するため、公園に来ている。

心臓専門医

レオ・ボケリア氏 

誕生日:1939年12月22日。

生誕地:アブハジア自治共和国オチャムチラ。

学歴:セチェノフ記念国立モスクワ第一医科大学。1968年に大学院を修了し、バクレフ記念心臓血管外科研究所に勤務。1994年に同研究所所長。

1968年、世界の先駆者のひとりとして先天性・後天性心臓障害手術を行い、かつては手術不能とされていた患者の抜本的治療の可能性を大きく拡げた。同氏によりロシア国内で初めて、突然死予防のための人工心臓移植手術が行われた。データベースに2万人以上の患者例がある、現在では唯一の心臓外科分野自動化病歴推進者の一人。

「黄金のヒポクラテス」国際賞(世界最高の心臓外科医に授与される賞)を受賞。

パイオニア

レオ・ボケリア氏は、何かを最初にやることを恐れたことは一度もない。すでにロシア保健省主任心臓専門医になる前に同氏は、先天性・後天性心臓障害、不整脈、心臓虚血症などの治療に初めて、成人だけでなく、子どもに対しても手術方式を適用した。また同氏は、たとえば、3Dモデル手術空間を創設したり、ロシアや独立国家共同体(CIS)諸国の医師20名以上とビデオ通信するなど、最新装置を利用して手術を行う。ボケリア氏は、自身の医学上の発明に関する150以上の特許を自分で保有している。

散歩と検診を兼ねる

 「ボケリア先生はどこ?」、「ボケリア先生は、今日来るの?」などの会話が、ウォーキング散歩愛好者たちの間で飛び交う。愛好者たちは2つのグループに分れて、2つの特設テントの中にいた。1つのテントでは、参加者を受け付けて、帽子とランニングシャツと歩数計を渡す。もう1つのテントには、これまでに行われた「散歩」で受け取った「ユニホーム」を手にした参加者らが集まっていた。ここでは青年男女が、指から採血して血糖値を測ったり、血圧を測るなど、健康測定を行う。

医師、看護師も多数参加 

「私は心臓外科医。ここにいる私たちはみな、心臓専門医です。上級看護師も一般看護師もいます」と、青年の一人が同僚と笑顔で握手しながら言う。彼らはバクレフ・センターの職員で、自主的に、このアクションに参加することにしたのだ。

「散歩」参加者のほとんどは年配者で、周辺のアパートに住む年金生活者。

「ロシアには70万人の医者がおり、その一人ひとりが毎年、せめて100人の人と散歩したら、医療や医療相談が必要な膨大な数の住民を把握できる」と、ボケリア氏は「散歩」の目的を語る。

長身で血色のよい顔立ちのボケリア氏は、問いかけてくる人たちの話を、とても真剣な表情で聞き、しかしいつも温かい笑顔で答える。

「規則正しい生活をするのが一番の予防です」 

「私たちは、高度な技術の治療法のことも、子供のころから教えられたが忘れてしまった単純な療法のことも話す。必要なのは、食べすぎ、飲みすぎ、たばこを止め、同じ時間に床に就き、すっきりした気分で起きること、要するに正しい生活をすること」。

「医師との散歩」は、すでに世界の多くの国で行われているが、ロシアではようやく8週間前に始まったばかりだ。ロシアの「散歩」主催者らは、この運動をモスクワに限定するつもりはない。将来的には、ロシアの他の地域だけでなく、CIS諸国でも「散歩」を実施したいと考えている。

レオ・ボケリア氏は、土曜散歩の始まりを自ら宣言する。また自ら散歩者の列の先頭に立ち、つぎつぎに浴びせられる質問に関してアドバイスする。会話を遮らないように、ゆっくりと歩き、ジョークを交えながら、日常生活の楽しいエピソードを話し、またある参加者とは、これまでの「散歩」の思い出を語る。

レオ・ボケリア氏は、ロシア市民に向けた健康書簡への署名を求められた2003年までは、社会活動について考えたことがなかったと打ち明ける。その後、全ロシア社会団体「国家健康連盟」の総裁になるようにとの提案が寄せられ、最初はひどく驚いた。

「健康地図帳」の効果 

「でもその後、自分には健康について人々に話すことがあると思い、同意した。われわれは、『ロシアの健康は国家繁栄の基礎』という健康地図帳の発行を始めた。これは、国民の病気、運動場の数、囚人数のほか、多くのデータを記した地図だ。それは信じられないほどの効果をあげた。諸団体の長は、近隣地域の状勢に関心をもち、自分のところはなぜちがうのかと問いかけるようになった。」

そうするうちに「クルィラツコエ丘陵公園散歩」は終わりに近づき、参加者らは、散歩のあと、数値がどう変化したかを検査するため、医師たちのところに戻る。以前の「散歩」のときの数値と比較する者もいる。

「散歩後の調子は上々で、軽い疲れくらい。血圧は下がり、気分が良くなった!」と「医師との散歩」がもう2回目のゾーヤ・グリゴリエブナさんは言う。