=ルスラン・スフシン撮影
=ルスラン・スフシン撮影
音楽家のピョートル・アイドゥさんとそのグループ「音楽研究所」が企画した、対話型展示会は、「擬音の復元」というテーマになっているが、そこには2つの意味が込められている。ポポフの発明した、劇場で効果音をつくりだす装置を修復する、という意味と、この木製と金属製の装置を使いながら生み出せる生活音を復元する、という意味だ。装置そのものと擬音の復元である。この展示会で、ロシア・アバンギャルドの時代に生まれた、さまざまな擬音の実験のひとつが紹介されたのだ。
耳を聾する“展示品”
会場には4つの展示室が用意され、ポポフが制作し、後に草創期の映画撮影者たちが使用した、約200個の「擬音」装置のうち、70個が紹介された。
最初の展示室では、交通機関の音の擬音装置が展示され、木製の棒と金属製の棒が互いにこすれることで、蒸気機関車の音を出す。2番目の展示室では、屑のつまった太鼓の取っ手をひねることで、雨の音を出し、3番目の展示室は、工場の騒音をまねるコーナーとなっていた。最後の展示室は戦いのコーナーで、槌が鋼板を叩くことで、剣が盾にぶつかる音を出す。
騒音でハイになる見学者
来場者の反応はどのようなものだろうか。この企画展の主催者で、科学的コンサルタントのコンスタンチン・ドゥダコフ=カシュロさんは、7月27日から9月16日までの長期開催なのに、すでに多くの装置が壊れていると話した。壊れないと考えられていたものまで、壊れる結果となってしまったという。
「擬音は人に予測不可能な影響を与え、時には粗暴にしてしまうのです」とドゥダコフ・カシュロさんは述べた。この対話型で、自由で、ためになる展示会に、来場者は夢中になってしまうのだ。
それぞれの装置には、ポポフの作成した、劇場向けの使用説明書がついている。例えば、コオロギの鳴き声は、「チェーホフの戯曲では、静かで悲しそうな効果音、ディケンズの戯曲では、嬉しそうな効果音にしなければならない」など、芝居によって変えなければいけないとポポフは書いている。
盾の音を出して名画の戦闘シーンに参加も可能
ポポフは俳優業のかたわら、自動車、戦車、船、カエルの鳴き声、波の音、雷、人間が水に飛び込む音などを劇場で生み出す装置を開発した。1910年代、モスクワ芸術座の演劇は、ポポフの発明のおかげで大きく変わった。
後に、擬音装置は映画やラジオでも使われるようになった。映画監督のセルゲイ・エイゼンシュテインは、自身の映画「アレクサンドル・ネフスキー」(1938年)で、盾にぶつかる音を表現するために、この装置を使用した。展示室の壁面には、この映画の決闘のシーンがプロジェクターで映し出され、来場者が展示品の装置を用いて効果音を出しながら、決闘に加わったような感覚を感じられるようになっている。
ドゥダコフ=カシュロさんによると、この展示会の目的は果たされたという。主催者は、忘れ去られていた装置を復元することで、擬音が文化的な現象であることを示し、装置に息吹を与え、芸術、劇場、日常生活の音楽である音の世界に融合させることができた。これは、グループ「音楽研究所」が伝えたいアイデアの一部にすぎない。
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