ロシア人は、ロシアのアニメが低迷していることを嘆いていたが、これからは、広島アニメフェスで2人も受賞したということを誇りにできる。ナタリア・ミルゾヤン監督は、「チンティ」(ヒンドゥー語でアリの意)という、乾燥させたお茶の葉で描かれた、見事なストーリーのアニメで、国際審査員特別賞を受賞した。グランプリに輝いたのは、ドミトリー・ゲレル(ゲラー)監督の、中国で撮影された「ネコを埋葬するネズミを見た」で、賞金100万円が贈られた。
中国の映画学校で生徒たちと製作
ゲレル監督は、ここ数年、ロシアで新しいアニメを制作することができず、中国の映画学校に教鞭をとりに行った。映画学校の幹部は、標準的な授業を行うのではなく、生徒と一緒に簡単な映画を作るよう提案した。
ゲレル監督は、ネズミが嬉しそうに死んだフリをしているネコを埋葬するという、ロシアの民衆版画でよく使われていた、短いロシアのおとぎ話を選んだ。登場人物の多いこのおとぎ話は、それぞれの生徒にネズミを割り当て、ネズミに「息吹を与える」ことを教えることができた。それでも、仕上がった作品は、完全に「ゲレル」風になり、優れた中国的ニュアンスがあるものの、笑えるというよりも、空想的で、ドラマティックなフィナーレの作品となった。
「ネコを埋葬するネズミを見た」のストーリーはこうだ。
ロシア的な夢と現実の世界
ランプで装飾された担架で、死んだネコを運ぶ陽気なネズミの一行が、夜の中を進む。遠くからは祭りの音が響く。主人公は、好奇心いっぱいに明かりと音楽のある方へ走りながらも、道の途中でクモを観察したり、暗闇の草に興味を持ったりする、小さな詩人の子ネズミだ。子ネズミは一行に追いつくものの、何が起こっているのか理解できない。酔っぱらったネズミが山を降りる時にネコを落としてしまうと、ネコはいじわるそうに目を開き、驚いたネズミは四方八方に逃げる。主人公の子ネズミはびっくりして立ち止る。最後は、雲の中にいる小さな子ネズミが、ゆりかごに乗るネコを永遠に揺らさなければいけなくなる。
哲学的なゲレル監督は、「万事この通りです。いつも悪くない者が苦しむのです」と語った。
さて、この作品の賞金100万円は、ロシアで最も優れた監督の一人であるにもかかわらず、何年も無職だったゲレル監督にとって、ありがたい収入に違いないはずだが、本人はそのお金を手にすることはないだろうと答えた。中国の学校との契約書では、賞金をプロデューサーに渡さなければいけないことになっている、というのがその理由だ。その代わり、ゲレル監督は、中国の他の場所から、新たに教師として招待される見込みだという。次の監督の映画も、また中国の作品として、フェスティバルのリストに掲載されることになりそうだ。
「ネコを埋葬するネズミを見た」の一部