ロシアがWTOに正式加盟

=ロイター/Vostock-Photo撮影

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ロシアは世界貿易機関(WTO)の加盟手続きを終了し、8月22日に156番目の加盟国となった。加盟までの長き道のりには、実質18年続いた協議や、ロシア下院議員やビジネスマンらの加盟反対による、最終段階でのWTO加盟議定書の批准の混乱などがあり、順風満帆とはいかなかった。

関税引き下げの恩恵 

WTOに加盟したロシアは、目立たない傍観者という立場に別れを告げ、世界貿易の規定の作成に加わることが可能となり、何よりも国内の鉄・非鉄金属や化学工業製品の輸出業者にとって意義の大きい、関税の引き下げという恩恵を受けられる。

ロシア経済スクールのナタリヤ・ボルチコワ教授はこう考える。「ここ数年のロシアの輸出は、多様化しないどころか、悪化の一途をたどっています。輸出促進対策は一切講じられていません。WTO加盟は、ロシアの輸出促進の上で、初の現実的な対策と言えるでしょう」。

市場の透明化と賃金の上昇 

WTO加盟はロシアの市場参加者の活動にも、大きく反映される。これからは、ビジネスの活動を管理するのがロシア政府ではなく、他国の代表者になるため、ビジネスの透明性が増す、と専門家は期待する。

「貿易政策の安定化により、外国人投資家にとってロシアがより魅力的な場所になります」とボルチコワ教授は述べた。プラスの効果は、消費市場にも及び、食料品などの製品も輸入緩和される。また、金融サービスや通信サービスなどの他の分野にも波及するが、「WTOからの贈り物」を受け取るにはしばらく時間がかかりそうだ。

“加盟料”を払い、自己改革できるか 

世界銀行の調査によると、WTOに加盟すれば、低所得労働者も高技能者も一律に賃金が上昇するという。その理由について、世界銀行の専門家は、新たにロシアに現地法人や支店を開設しようとする外国企業は、偏った採用ができなくなるから、と説明する。

プラスの効果を得るためには、ロシアの国家予算をつぎ込む必要もある。経済開発貿易省(経済発展省)のアンドレイ・ベロウソフ大臣は、「加盟料」が2013年に1880億ルーブル(約4500億円)、2014年に2570億ルーブル(約6400億円)かかると発表している。しかしながら、大臣はあくまでも楽観的だ。予算の実質的な損失はこれよりもずっと低くなるという。

輸入関税は段階的に低減していくが、ベロウソフ大臣によれば、これによって、産業企業や農業法人が段階的に新しいシステムに順応できるようになる。

加盟条件はロシアに比較的有利 

もっとも、世界銀行の予測は、金融危機による「悲観論」を一部和らげてみせている。世界銀行のデータによると、WTOに加盟することで、最初の3年でGDPが3.3%(650億ドル)、11年後には11%(2150億ドル)成長し、しかも成長はずっと続くという。ただ、ロシアの専門家はそれほど楽観視はしていない。

しかし、全般的に見て、WTOでのロシアの権利は決して制限されていない。外国銀行の支店がロシア国内の市場に参入する条件を、国に有利に定められたし、ガスの輸出関税も30%を維持できることになった。新しいシステムに慣れるまでの移行期間についても、自動車製造、農業、保険などの分野で長期に設定することで合意できた。

共通の利害をもつ国と協調 

「ロシアはかなり有利な権利を持てることになりました。今後の課題は、積極的に活動し、自分たちだけが得をするのではなく、利益にもとづいて他の国と提携しながら、ともに成長していくことです。例えば、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、中南米などの、農業への補助金が少ない国に関心を抱いています。このグループは、農業への助成金をできるだけ早くなくすことに関心を抱いています。我々はひとつになって、そのために戦わねばなりません」と国立高等経済学院の世界経済・世界政治学部のアレクセイ・ポルタンスキー教授は考える(米国などは、逆に政府からのぶ厚い補助金に支えられて、農産物を輸出している)。

市場参入を自由化するのにかかる移行期間は2年から3年、より“センシティブ”な製品では5年から7年になる。加盟にともなう新たな条件によって、一定の経済上また金融上の困難が生じる“センシティブ”分野として、批准手続きの作業部会メンバーは、自動車産業、農業、農機建設、軽工業を指定した。

*元記事:http://www.rbcdaily.ru/2012/08/22/focus/562949984564749

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