1時間半、童心に戻る

豪華で、感動的で、愉快な、ビャチェスラフ・ポルニンの「スネジュノエ・ショウ(雪のショー)」は、ただの演劇にとどまらず、雪、お祭り、子供時代の世界に、見る人々をいざなう。

「雪のショー」は、誰の人生にもあるような出会い、別れ、喜び、悲しみなどを、舞台に凝縮した、華やかで奥深い演出をしている。普通の生活と違うのは、ここでは人間ではなく、黄色いつなぎ服や緑のコートを着た、ひょうきんで優しい不思議なキャラクターが登場することだ。このキャラクターは、顔の表情、ジェスチャー、職人的な名演技などで楽しませる、表現豊かなピエロだ。

忘れられた感情がある国 

舞台はザゼルカリエ(鏡の向こう側)という、多くの幸福、優しさ、愛情などに満ちた、忘れられた感情がある国だ。観客は自然とこの世界に引き込まれ、大人は童心に帰る。

「雪のショー」には、サーカスのような曲芸はなく、俳優がつな渡りをすることもない。俳優であるビャチェスラフ・ポルニンさんは、こう語る。

「サーカスのように見えるものはすべて取り除き、純真さだけを残しました。ピエロが舞台中を歩き回り、観客は、これなら自分でもできるというような気持ちになれます」。

ピエロは不器用な素振りを見せ、観客が徐々にその様子に慣れてきて、「まるで自分のようだ」と感じるようにするのだ。

「舞台の上に自分のようなピエロがいて、まるで自分が舞台に立ったような気持ちになってくるのです。言い換えれば、この愉快なキャラクターは、非現実的な世界にいる、観客自身になっていくのです」とポルニンさんはつけ加えた。

舞台が自分の内面世界に 

そうなると、観客はただ座っているだけではなく、舞台に参加したような気持ちになり、劇場の壁、天井、装飾、舞台の袖口などが、自分の外に存在してはいるものの、自分の心の世界そのものになっていく。

「現実から逃げているわけではなく、幸福な新しい現実をつくりだし、それが広がっていくことを願っているのです」とポルニンさん。

観客はその仕掛けに敏感に反応する。

「1時間半、子供時代に戻れるのはすごいことです。ショーの細部を分析したり、比較したり、探ったりする必要はありません。皆さんの童心がすべてを教えてくれます。幸福、おとぎ話、夢を求めるなら、ここにはすべてがあります」と観客の一人であるマリーナさんはインターネット上でコメントした。

ポルニンさんが、鮮黄色のダボダボのつなぎ服、赤いマフラー、赤いフワフワのスリッパを身に付けた、小さくて、純粋で、びくびくしたキャラクターになりきり、手の届きそうな喜びの波に包まれていることを、観客は肌で感じる。

世界各地でお国柄に合わせて演出 

「雪のショー」は、独特でおもしろいことから、世界中で大成功を収めている。ショーの構造を変えることなく、ポルニンさんは演出する国の観客の感性や伝統に合わせるようにしている。ポルニンさんの劇団には、「世界中に数十人ほどの友人がいる」ため、決まったメンバーはいない。

「毎回どこかの国に出発する時は、そこがどのような国なのか、どんな雰囲気なのか、誰が適任なのかを考えます。スペインには情熱的な人、イギリスには鋭敏な人など、自分の友人の中から、ぴったりな人を選びます。ロシア人はとても情に厚いので、情愛あふれた人が選ばれます」とポルニンさんは説明する。

そのため、「雪のショー」はそれぞれに特徴がある。「ジャズのようなものです。ジャズはつねに即興ですから」。

 

 *公開情報に基づき執筆。