写真提供: www.ridus.ru
アートオークションの当日、7月13日、モスクワは滝のような土砂降りとなり、冠水した。雨水管の上では渦巻きができており、自動車が道路で流されている。まるで黙示録に出てくるような大雨が、ロシア南部の小さな町が現在救援を必要としていることを、首都に思いださせようとしたかのようだ。その町とは、クリムスク市のことだ。
わずか1週間前の6日から7日にかけての深夜、突如、水位が上がって、巨大な高波が押し寄せ、眠りについていた住民を仰天させた。多数の住民が亡くなり、生存者は身の回りの物全てを失った。
全国から人道援助が差し伸べられ、食品、衣料、医薬品などがボランティアによって集められ、クリムスクに送り届けられた。
新名所「赤い十月ギャラリー」で
モスクワのアーティストやギャラリー経営者たちも、支援のために力を合わせた。
都心にある、かつてのチョコレート工場「赤い十月」の建物には、現在アートギャラリーや、レストラン、バーなどが入り、人気スポットになっているが、その煉瓦造りの壁に、「クリムスク救援!」と、青と白で描かれた大きな表示が出ている。
「赤い十月ギャラリー」は、「リジーナ・ギャラリー」と共同で、オレグ・クリク、セミョーン・ファイビソビッチやイリヤ・カバコフなどの有名アーティストだけでなく、アルセーニー・ジリャーエフ、ミーシャ・モストやオレグ・ドウといった若手アーティストを含む約50点の作品を集め、オークションを行った。収益は、もちろん、クリムスクの被災者救援に使われる。
イリヤ・カバコフ氏の作品など50点
写真、絵画その他の芸術品は、飛ぶように売れた。来場した20人近い収集家と代理人は、ユーロでの入札を承知し、初めは何千ユーロという単位の付け値で競りが始まったが、参加者はより高い値を念頭に置いていた。
結果的に、ギャラリーは15万ユーロの収益を得た。このオークションの主催者の1人でギャラリー経営者のウラジーミル・オフチャレンコ氏によると、慈善を目的とするこの競売の開催に、わずか4日間の準備でこぎ着けたという。
「相談したアーティストたちはすぐに作品を提供しようと言ってくれました。そのうちの多くは、自ら参加の希望を申し出てくれた人たちです」。
イリヤ・カバコフ氏は、参加の話を持ちかけられなかったことに激怒し、オークションの当日にニューヨークから電話をかけてきた。しかし、すでに当日だったため、彼が提供できた絵画は、ミニチュアの1点だけだった。にもかかわらず、この作品も売れた。
前日に作品を完成させて提供した若手も
収集家で美術史研究者のイリーナ・ドゥクシナ氏も、チャリティー・オークションのアイデアを歓迎した。
「素晴らしいことです! 今日この場所で、被災者のために良いことができました! おまけに、一流の芸術品を購入する機会まで与えられたのですから」。
若手アーティスト、ミーシャ・モストは、自作の彫刻「ヒーロー」を提供した。
「この作品は、昨晩完成させたばかりで、すぐにこのギャラリーに持ってきました。自分も含めて参加者の全員が、迷わず参加を決めました。クリムスクでの出来事は、皆を驚愕させました。これは私たち全員の問題なのです。ですから、何らかの方法で援助することができるなら、行動すべきです」。
ギャラリーの入り口には、「クリムスク救援」と書いてあるボタンが目につく。皆が同情の面持ちでボタンを押していく。
いつ、どのような形でオークションの収益を被災者救援に役立てるかは未定だ。
「アイディアはいくつもあります」と、主催者のウラジーミル・オフチャレンコ氏は言う。「そのうちの一つは、あの町の地獄から子どもたちを連れ出し、休暇に連れて行くための経費を出すということです」。
15万ユーロ以上の金額の使い途は、「赤い十月ギャラリー」のフェイスブックページで知ることができる。
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