スメシャーリキとは?
百聞は一見にしかずだが、簡単に言えば、まん丸な形をした動物たちが架空の国で繰り広げる冒険物語だ。悪役は一切出てこない。丸い形は、キャラクターたちの善良さを強調すると同時に、幼児でも簡単に描けるという利点がある。どのキャラクターにも、それなりの人生行路があり、個性をもっている。
2005年に「スメシャーリキ」は、中国の広州市で開かれた国際フェスティバル「中国国際漫画・デジタル・アート・フェスティバル」(China International Cartoon and Digital Art Festival)でグランプリをとり、2011年には中国でのテレビ放映が始まった。その際、アジアっぽさを出すということで、ドラゴンとパンダが新キャラクターとして加えられた。
どのシリーズでも、すべての子供たちが日常ぶつかるような、難しいシチュエーションが生じて、キャラクターたちは丸い頭を抱えて悩むことになる。見た目の子供っぽさや単純さの背後に、かなりシリアスで時に哲学的でさえあるテーマが隠れているので、大人にもファンが少なくない。
シリーズ誕生は2004年のこと。2008年9月に104シリーズまで製作されたところで、アメリカのテレビ局「The CW」でも、「GoGoRiki」の名で放映されたほか、ドイツで「Kikoriki」、イギリスで「Kikoriki」、イタリアで「Chicorichi」の名で、それぞれテレビ放送された。また、旧ソ連圏のカザフスタンとウクライナでも放映されている。
ロシアでアニメが赤字になる構造的要因
しかし、ロシア製アニメはまったく順風満帆というわけでもない。上記の「KVGリサーチ」の調査によると、国営テレビ局6社で昨年1年間に放送されたアニメのうち、外国製アニメが実に87%を占めたのに対し、ロシア製アニメは7%、ソ連製アニメは6%という割合だった。
「スメシャーリキ」を製作した「リキ」グループのイリヤ・ポポフ統括プロデューサーの説明によると、外国製アニメが圧倒的に多い理由は、ロシアのアニメ・シリーズの制作がまだ発展を始めたばかりであること、また海外と比較できないほど制作会社の数が少ないことにある。
調査会社「KVGリサーチ」が、国営テレビ局6社で昨年1月1日から12月31日までの間に放送されたアニメを調査した結果、ロシアでテレビ放映されたアニメのうち、ほぼ50%がソ連製だった。また全体の81%がシリーズもの、10%が長編、9%が短編だった。放送時間帯では、ゴールデンタイムがわずか6%、曜日では休日の放映が34%だった。
さらに、ロシアでは、アニメ市場を大きく飛躍させ得るアニメ専用チャンネルも少なく、すでに海外で放送された外国製アニメは、しばしばロシア製に比べて放映料が安いなど、「国産品」を取り巻く状況は厳しい。テレビの放映料だけでは、ロシア製アニメは制作費用の元を取れないのが現状だ。
「リキ」グループがここ5年で投じた制作費用は、15億ルーブル(約36億円)にのぼり、収益の主要な部分がライセンシングと「スメシャーリキ」ブランドのおもちゃの生産でまかなわれている。外国では、視聴者が特別なアニメ・チャンネルと契約して見るため、視聴者がアニメに直接支払う形だ。
ロシアでは、通常チャンネルがコマーシャルで稼ぎ、視聴者に無料で配信するが、子供向けの番組にはコマーシャルを挿入できない規則になっている。
ヒット作「イワン王子と灰色オオカミ」
ロシアの大手アニメ制作会社は、劇場版のアニメ映画も制作している。2011年12月に公開された長編アニメ映画「スメシャーリキ。始め」は、オカルト的なファンタジー「ナイト・ウォッチ」(2004年)や「デイ・ウォッチ」(2008年)の監督として有名なティムール・ベクマンベトフ氏の映画会社「バゼレブス」が、「リキ」グループに協力して作った作品だが、制作費用1150万ドルに対し、興行収入は840万ドルにとどまった。
とはいえ、すべてのロシア製アニメが赤字というわけではない。「スメシャーリキ」と同時に公開された「メーリニッツァ(水車小屋)」社の「イワン王子と灰色オオカミ」は、制作費用270万ドルに対し、興行収入2462万ドルを集め、ロシアの映画史で最も収益の大きい作品の一つとなった。ロシアの民話にコミカルな味付けをした作品だ。
「リキ」グループ制作「スメシャーリキ(愉快な球体)」シリーズ
*コメルサント紙の記事の資料を使用: