“外国のエージェント”をリスト化

=アレクセイ・ニコリスキー/ロシア通信撮影

=アレクセイ・ニコリスキー/ロシア通信撮影

与党「統一ロシア」は、外国から資金援助を受けてロシアで政治活動を行っている非営利団体について、“外国のエージェント”と位置づける法案を下院(国家会議)に提出した。法案は賛否両論を巻き起こしている。

“外国のエージェント”とは? 

この法案は、国内で活発に政治に関与する非営利団体の立場を大きく変えることをもくろんでいる。法案を支持する下院議員たちは、海外から資金援助を受けている団体をリスト化することを主張している。

法案の作成者によれば、このような団体は、事実上、“外国のエージェント”に他ならない。しかし、この言葉は、諜報、スパイ活動を意味するわけではなく、外国の利益のために活動している具体的組織を指す、と注釈を付けている。

規制の中身は? 

この法案が可決されると、“外国のエージェント”は、年次会計監査を受けることや、半年に一回会計報告を公表すること、また資料を頒布する際に、“外国のエージェント”と明記することなどが義務づけられる。また、団体の過激な活動を証するような国民の情報あるいは刊行物があった場合に臨時調査が実施される可能性についても定められている。

今回の法案の対象となるのは、外国から何らかの資金を受け取り、「政治活動」をしている非営利団体だ。世論を「形成」するなどの方法で、国家機関の決定に影響を及ぼすような活動などが含まれる。対象団体は、自ら司法省に赴き、「“外国のエージェント”機能を遂行する」非営利団体の登記簿への登録を願い出て、その後その団体のあらゆる資料に、“外国のエージェント”のステータスを明記することが義務となる。情報の提示を拒んだ場合は、最高100万ルーブル(約250万円)の罰金、また不正な目的による規則違反の場合は、懲役3年以下が課せられる

政府による把握の実態 

ロシアには非営利団体が23万以上あるが、うち約30%はまったく活動していない。司法省は現在、年に一回すべての団体を調査しているが、政府発行紙「ロッシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)」によると、団体がどこから何の目的で資金を受け取っているかについては、ほとんど把握していない。活動資金の70%は外国の予算から、20%は多国籍企業から、10~15%は個人の寄付から出ているという。

法案の狙いは?

罰則は罰金のみになる見通し 

ただし、“外国のエージェント”とみなされるようになるのは、政治関連の活動をしている団体に限られるという。クレムリン筋はこう説明する。「新しい合理的な“ゲームの規則”を定めようとしているわけですが、団体の活動評価は、公表される表向きの目的を見てではなく、その団体が実際に活動した結果を見て行います」。

在米サンクトペテルブルグ事務所で4年間所長を務めた経験のある、外交政策研究所のベロニカ・クラシェニンニコワ所長は、アメリカの法律を引き合いに出した。同研究所は、2011年にモスクワに設立されたシンクタンク。彼女は米国で政治活動を行ったことはないのに、“外国のエージェント”としての登録を余儀なくされたという。

「米国では、“外国のエージェント”に登録されると、半年ごとにその活動についての報告を行い、すべての契約書の写しや顧客との口頭の約束事まで提示しなければならないのです。どこからどれだけ資金が入り、どこにどれだけ使われたかという収支報告も当然含まれます」と所長は説明した。

アメリカでは、この規則に違反した場合、5年以下の懲役が課せられるなど、ロシアよりも厳しい。今回の法案では、罰則が罰金のみになると、下院議員の多くは考えている。

巻き起こる賛否両論… 

専門家の反応はさまざまだ。汚職に取り組む国際的な非政府組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」のモスクワ事務所長エレーナ・パンフィロワ氏は、この法案が非営利団体の透明性とは無関係なため、必要ないと考える。

アレクサンドル・シジャキン

アレクサンドル・シジャキン議員は、デモ規制法案の作成者でもある。これはすでに発効し、6月9日から施行されている。当局に許可されていない抗議活動またはデモに参加した場合や、デモに参加して秩序を乱した場合などの罰金額を大幅に引き上げたものだ

「いつもさまざまな相手に会計報告を行っていますし、年次会計監査も受けています。また税務署や司法省、当事務所の本部である国際『トランスペアレンシー・インターナショナル』の理事会にも報告書を送っています」。

法律事務所 LEVINE Bridgeの法律家であるアレクサンドル・ブリャンツェフ氏は、この法案で重要なのは適用そのものではなく、“外国のエージェント”という位置づけだと考える。

「該当する非営利団体に、“信用できない組織”のレッテルを貼る政府の狙いがあります。現段階では、この法案は、ロシアと西側諸国の政治的駆け引きにすぎないでしょう」。

法案作成者の一人であるアレクサンドル・シジャキン議員は、法案の必要性を確信している。同氏は「ロッシースカヤ・ガゼータ」の取材に対し、有権者の権利擁護に取り組む「ゴーロス(声)」協会が、昨年12月に行われた下院選挙の管理に積極的に参加していたことに触れ、同協会が2011年に費やした費用は20億ドル(約1600億円)だったのに対し、それまでの費用が比べ物にならないほど少なかった点を指摘した。

「昨年の費用が高額になった理由が選挙にあることは明らかです。ロシアのすべての政治活動に非難を投げつけるのが狙いです。国民には、この協会が“外国のエージェント”の機能を果たしていることを知る権利があります」。

一方、人権擁護団体「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」のリュドミラ・アレクセーエワ氏は、この法案が成立すれば、同団体やその他の人権団体は、海外からの資金援助を断らざるを得なくなり、その結果、市民の権利を守る活動の一部を行えなくなる、と指摘した。

*RBC・デイリー、コメルサント、「ロッシースカヤ・ガゼータ」の記事を引用。