=Alamy / Legion Media撮影
7歳のアリーサ・チューポワちゃんの一日は9時に始まる。朝食後、少女は綴り方に励み、ノートに単語を記す。隣にはママがいて、娘が正しく手を動かして一字一字を入念に書くよう見守っている。
午後一時頃、アリーサちゃんは、弟も一緒にママと動物園へ出かけ、本に出てきたウズラやライチョウ、オオタカがどんな姿をしているか、自分の目で確かめる。平日の昼間なら館内は空いており、理科の個人授業にはもってこいだ。
法で認められた「家庭内教育」のみのロシアの児童の数
アリーサちゃんが普通の学校に通わないのは、ママが娘のために家庭教育という特別の教育形態を選んだから。ロシアではそうした形態は合法であり、「教育に関する」現行法でもその改正法案でも認められている。選択の権利は親にある。授業としての家庭教育が存在しない日本とは様子が違う。
ロシア連邦の教育に関する法律によれば、各家庭は自主的に、公立・市立または私立のいずれかの学校を選べ、またその教育形態も選択できるとなっている。日本の場合、教育基本法、学校教育法の規定によって就学義務が定められ、『義務教育を学校以外で行うことは認められていない』とされている。上級学校の入学資格については、正規学校に在籍していれば卒業を認められるケースが多く、正規学校に在籍しない場合には、「中学校卒業程度認定試験」に合格する必要がある。
ロシアにおける家庭教育の普及は目覚ましく、2008年にはわずか1万1千人だった「家庭内」児童の数は数年間でほぼ 10 倍に増えた。
アリーサちゃんのママ、エカチェリーナ・チューポワさんは「家庭なら自分たちの都合に合わせて子供の一日のプランを立てることができます」と語る。
しかし、家庭教育は「飴」ばかりとは限らない。時には子供に何かを強いることもある。子供を自ら教育することにした親たちへのプロの手助けはもちろん必要だ。一部の教育機関では、遠隔サポートやオンライン相談といった親たちのための特別講座が開かれている。
家庭教育の反対者がよく指摘する一番の問題点は、社会性の「欠落」である。モスクワ市心理教育大学・一体(包括)教育問題学術院のエレーナ・クチェーポワ副院長は「普通の学校あるいは幼稚園は、他の子供や大人たちとの関係の構築を想定していますが、家庭ではそうした関係は築かれません。これは大きな欠点です」と警告する。
クチェーポワさんの話では、「家庭学校」の子供たちがよく通うサークルや部会での交流も有益であり、社会に適応する一助となるが、責任感は学校でしか育むことができないという。
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