2006年のハノイ(ヴェトナム)・フォーラムで、ロシアの代表団は、2012年のサミットを太平洋に臨むロシアの都市ウラジオストクで開催するよう提案した。当初は市の中心部のいくつかの建物の改修が予定されていたが、一年後、その予定は、ウラジーミル・プーチン大統領の支持を得たはるかに費用のかかるルースキー島の建設プロジェクトに改められた。=アレクサンド・ヒツロフ撮影
今秋のAPECサミット開催の準備は、ウラジオストクを変貌させている。
起伏のあるこの街の中心部に点在するクレーンは、APECサミットに向けて連邦政府がこの都市に注ぎ込んだ何十億ドルもの資金を反映している。空港からの狭くて穴だらけの道路は4車線の高速道路に拡張された。新空港もこの夏オープンする。空港から市の中心部をつなぐ高速鉄道が開業間近で、劇場もほぼ完成している。
会場の島へ連絡橋
完成寸前のプロジェクトの中で最も注目されるのは、ルースキー島と本土をつなぐ連絡橋と、極東国立大学の新キャンパスだ。
3キロ以上にも及ぶ連絡橋は、2つの人工島に高くそびえるマストによって支えられる。中央のマストの高さは300メートル以上にもなる。完成すると世界最長の斜張橋となる(建造コストは 10 億ドル)。
ロシア極東の港および近隣諸国の港との比較 |
「イノベーションや現代化を語るなら、これをおいて他にないでしょう」と、地方発展省スポークスマンのアレクサンドル・オグネフスキー氏は、連絡橋を指さしながら語った。「国際企業の多くが、この事業は実現不可能だという理由で入札をあきらめ、オムスクの企業が落札した。このプロジェクトのために開発したノウハウは、別のプロジェクトに応用されるだろう」
ルースキー島には防衛施設が存在し、数千人の退役軍人とその家族が居住している。当時のプーチン大統領がウラジオストクの4つの主要大学を統合し、新たなキャンパスに移転する計画を支持するまで、この地域は閑散としていた。
ルースキー島は、サミットの会場となり、その後、極東国立大学のキャンパスとなる。
「ロシアは人口が減少中で、国中の大学が学生不足に直面している」と、最近まで大学の総長をつとめていたウラジーミル・ミクルシェフスキー氏は語った。
政府当局は、このキャンパスと、政府助成金により、世界各地から優秀な頭脳が集まり、生物医学やITなどの分野で世界クラスの大学が設立されることを期待している。
人口流出に悩む
過去 20 年間に 30 万人にも及ぶ人たちが、より住み心地のよい地方や海外に 移っていった。過疎化が進んでいるウラジオストクの人口の半分に 匹敵する 。
「私が知っている中国語専攻の学生のうち、 3 分の 2 の人たちは、キャリアを求めて卒業後、海外に渡 った 」と、極東民族歴史・考古学・民族学研究所所長の ビ ク トル・ラリン氏は語った。
「この街のインフラのほとんどは、使い物になりません。家内と一緒に散歩に行ける場所がないくらいです。ここに住みたいと感じてもらえるための鍵となるのは、 この 連絡橋 だ 」。
生活が苦しいこの街の住民にとっては、連邦政府からの資金が底をついた時にどうなってしまうかが心配の種だ。
新指導者を選出
3月の中旬、前知事のセルゲイ・ダルキン氏は、メドベージェフ大統領(当時)によって突然罷免され、ウラジミール・ミクルシェフスキー氏( 44 歳)が選出された。彼は政治の透明性と腐敗対策を公約に掲げた。同氏は、「科学的および教育的リソースを駆使することで長期的な発展をめざす必要があり、科学アカデミー極東支部と極東国立大学は、その要となる」と述べた。
ミクルシェフスキー氏は、「ロシアNOW」に対して「インフラの整備不足が(ロシアに限らず)投資の妨げとなっていたため、2千億ルーブル(約 70 億ドル)の連邦予算がインフラ改善に投入される。ウラジオストクの名をAPEC中に知らしめるきっかけにもなる」と語った。
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