ビクトル・ベクセルベルグ氏、「スコルコボ」プロジェクトの総裁=アレクセイ・フィリポヴ撮影/ロシア通信
ドミトリー・メドベージェフロシア連邦首相のイニシアチブのもと、現代の様々な応用研究の分野でロシアの資源を円滑に利用する目的で設立された非営利団体である技術革新分野基金“スコルコボ”には、ヨーロッパ諸国やアメリカ、ロシアの企業は既に多数参加していますが、日系企業の参加はまだありません。
スコルコボではこの状況を是正することにしました。すなわち、去る4月末の経団連代表や東芝および日立の首脳、玄葉光一郎外相、枝野幸男経済産業相を交えた会談のために、基金のヴィクトル・ヴェクセルベルク理事長が私的に来日を果たしました。
ヴェクセルベルク氏は、「“スコルコボ”は日系企業との提携の準備はできてはいる。しかし、彼らの技術および資金の援助を望んでいるわけではない。」と語りました。
加えて「ロシア側は日系企業との互恵協力関係を期待している。日系企業はロシアの研究機関との提携のもとでロシア国内や国際的なマーケットで運用が可能となる技術を獲得することになるだろう。」と述べました。
更にヴェクセルベルク氏は、東芝および日立の首脳陣との会談の際に省エネ対策とスマートネットワーク開発の分野での提携に関する問題が話し合われたとも語りました。
彼は語気を強めてこう語りました。「我々には成し遂げなければならない課題がある。それは世界に追いつくことではなく、それを追い抜くということなのだ。ロシアにはこれを実現するための基盤がある。第一に若くて優秀な人材がある。」ヴィクトル・ヴェクセルベルク氏は日本の玄葉外相から私的な招待を受けました。
汚職やロビー活動の疑いを持たれることを嫌う日本において、外相レベルの人物から企業の代表が会談の要請を受けることは珍しいことです。会談は20分に及びました。
国際的戦略に関する状況が刻々と変化している中で、技術革新の分野を含む、あらゆる提携関係を推し進めていく必要があると玄葉外相は述べました。
ただし条件として、この席で玄葉外相は、両国間の今後の関係を進めるにあたって、ロシア側が投資環境の改善と汚職を防止する措置を講ずる必要があると述べました。
一方、ヴェクセルベルク氏は、スコルコボ・プロジェクトがこれらの問題の一部を解決し、日系企業がこのプロジェクトに積極的に参加することを希望すると述べました。
ロシアメディアは、日系企業のスコルコボ参加によって、単にロシアの一学術都市が新しい機会を得たということ以上の大きな見返りがあるだろうと報じています。
一例を挙げると、“コメルサント”紙は、日本がこのプロジェクトに積極的に参加する事によって、両国間の他の問題にも正常化をもたらす可能性があると述べています。
スコルコボが、両国間における国交正常化の第一歩になるべきであるというのがコメルサントの論調です。
ヴェクセルベルク氏の東京訪問に対する日本側からの回答は予想以上に迅速なものでした。すぐ1か月後の5月25日、モスクワにおいてヴェクセルベルク氏と日本の山根外務副大臣との会談が行われました。
日本側は、“スコルコボ”と日系企業との提携をすすめる用意があることを表明しました。
既に事態は進展し始めました。5月末にモスクワで“スコルコボ”と東芝のハイレベル協議が行われたのです。
この協議では、“スマートシティ”の技術分野に関する提携が話し合われました。
基金のヴィクトル・ヴェクセルベルク理事長の訪日が、これらの動きの端緒となったといえるでしょう。
これを持って具体的なことを論議するのは時期尚早です。彼の訪日はまだ表敬訪問の域を出ないものだったからです。
理事長は日本の経済団体や政治団体の代表者たちに対してプロジェクトを説明し、彼らに参加を募ったに過ぎません。
「ロシア側は日系企業との提携と互恵協力とを期待している。“スコルコボ”基金は新しいテクノロジーや技術革新の分野におけるプロジェクトの立案とそのサポートを目的として設立された。日系企業はロシアの研究機関との提携のもとでロシア国内や国際的なマーケットで運用が可能となる技術を獲得することになるだろう。」と理事長は語っています。
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