聖なるキジ島

カレリア地方のオネガ湖に浮かぶ小島に、ヨーロッパ中世の大聖堂に匹敵する教会が並んでいる。

写真提供:ウイリアム・ブルムフィールド

 ロシア北部のラドガ湖と白海の間にある森にはかつて、丸太から造られた教会が数多く点在していた。これらの貴重な建造物は、現在ではわずかしか残っていないが、その中でも最も目を見張るべきものは、カレリア地方のオネガ湖に浮かぶ1400の島のうちの一つ、キジ島にある。岸から離れたこの島は、昔から神聖な場所とされてきた。


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 1990年、キジ島はユネスコの世界文化遺産に登録された。この島にはロシア最古の木造教会建築が現存しており、中でも最も古いとされる「ラザロの復活教会」は、14世紀末に建造されたものである。

 ロシアの木造教会建築の代表的なものとしては、1714年にピョートル大帝のスウェーデンに対する勝利を記念して建てられた、「救世主顕栄大聖堂」がある。島の南西にあるこの教会は、「ポゴスト」と呼ばれる教会建築群の中央にある。

 モスクワの赤の広場にある聖ワシリー寺院のように、キジ島の主な教会には半球状の丸屋根が多く、圧倒的で複雑な印象をもたらすが、それらは全て、厳しい構造的、美的理論に基づいている。ピラミッドのようにそびえ立つ高さ37メートルのシルエットは、遠くからも神聖なものだと分かるように出来ており,建物全体はその荘厳な雰囲気を保っている。「救世主顕栄大聖堂」の中央には、3段の高さのある八面体があり、その四面はさらに継ぎ足された支柱によって支えられている。これらの支柱にも段があり、合計22の「クーポラ(半球屋根)」を構成している。この複雑なパターンと木造建築は、使用された木材の違いによって、さらに強い印象を与える。壁は色の濃い松により出来ているのに対し、30000以上のポプラの瓦に覆われたクーポラは、まばゆい銀色に光り輝いている。

 「救世主顕栄大聖堂」は本来、夏期の大きな祭日にのみ使われる目的で建築された。ロシアでは夏期用と冬期用に、ペアで建てられた教会が少なくなかった。キジ島には、冬用の「生神女庇護祭聖堂」が1764年に建てられ、視覚的な調和を保たせている。

 「キジ・ポゴスト」木造教会建築群の中にある鐘楼は、ちょうど二つの教会の中間地点にある。18世紀に建てられたこの鐘楼は、1874年に建て替えられ,1990年代にもさらに改築されている。墓地を含むこの一帯は、地面に水平に組み立てられた丸太の低い塀によって囲われている。

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 キジ島の中間及び北の部分にも、周囲の村から運ばれて来た教会がある。これらは全て、ロシアの伝統的な木造教会建築様式に基づき、礼拝の場にふさわしい、控えめな美しさをたたえている。中でも特に目立つのは、カレリアのコンドポガ地方カヴゴラ村から運び込まれた、18世紀建造の三成聖者教会である。

 キジ島を去る際に、「救世主顕栄大聖堂」の姿が再び目に入る。 欧州の有名なゴシック様式の教会ほどには知名度は高くないものの、その大胆な表現においては、それらの教会に匹敵する姿であることを、改めて実感することができる。