改革は間に合うか

アンドレイ・ネチャーエフ氏

元ロシア連邦経済相

下院(国家会議)と大統領の選挙に真の競争原理が欠けていたため、社会のかなりの部分は、政権の正統性に疑念を抱いている。これは極めて危険だ。政府は近く、数々の難局を迎え、しばしば社会的、経済的難題を不人気な措置で処理していかねばならない。しかも、大盤振る舞いの選挙公約が、それでなくても困難な状況をことさらに深刻化させた。

壮大なバラマキ

プーチン氏の社会保障面の公約だけでも、格付け機関フィッチは約 13 兆円が必要と見積もっている。これらのバラマキは、既に政権が引き受け済みの義務の上に重くのしかかる。
その主なものは、国防費の飛躍的な増加(2020年までに 20 兆ルーブル=約 56 兆円)と、既に実施された軍・治安機関の職員の給与と年金の引き上げ。さらに、2014年のソチ冬季オリンピック、今年のAPEC(アジア太平洋経済協力)サミット、2018年のサッカーのワールドカップ等々一連のメガプロジェクトが加わる。
外的条件つまり世界経済の状況も原料輸出に依存せざるを得ない露経済にとって厳しい。ごく楽観的な予想でさえ、向こう数年間のロシアのGDPの伸び率は、原油高が続いたとしても、年3~4%を下回る。

問題山積
しかも、露経済には時限爆弾がある。先送りしてきた、不人気な改革のことだ。
まず、年金、教育、医療、 保健など社会保障制度の改革である。安月給の代名詞である医師と教師の給与は、既に引き上げを予告、奨学金も来年に最低生活費の水準までの引き上げを約束済みだ。
住宅、ガス、電気、上下水道等の公営事業の再建にも、巨額の投資が必要だ。ガス管の爆発などインフラの老朽化による事故が頻発しており、これ以上問題を放置できない。
早急に抜本的解決を要する分野は他にも多い。
貿易収支も悪化している。数年前にはロシアでは、原油価格が、現在のように1バレル115ドルでなくても、 
30 ドルでも赤字予算ではなかった。今のところ、高止まりしているが、これ以上の高騰は期待できない。経済に奇跡はないのだ。

支出減か増税か
予算の問題を解決するためには、支出の大幅減か増税のどちらかが必要だ。しかし、前者には政治的なリスクがあり、社会が政権に疑念を抱いているなかで、その手は打てない。
残るは増税。プーチン氏が選挙戦の最中から曖昧ながら税のことを口にし始めたのも偶然ではない。だが、増税も危険だ。ロシアのビジネスは、税金のほかに巨額の賄賂を払っている。
しかも、露経済の構造改革とイノベーションの発展には、減税による刺激策が不可欠だ。所得税を引き上げた苦い経験は記憶に新しい。まず中小ビジネスの経済活動がしぼみ、企業活動は闇へ逃れたのだ。

解決策は?
しかし、根本的な解決の道はある。汚職を減らし、ビジネスに対する行政的圧力を下げることで、経済活動を自由化し、急激な経済成長を実現することだ。もっとも、その効果はすぐには現れない。残念ながら、政権はそうした道を歩もうとする姿勢を示していないが、厳しい現実がそれを強いるだろう。ただ、それが手遅れにならなければいいのだが。