ブラノヴォ村のおばあちゃん

民謡グループ「ブルーノフスキエ・バーブシキ」 =ロイター/ボストーク撮影

民謡グループ「ブルーノフスキエ・バーブシキ」 =ロイター/ボストーク撮影

民謡グループ「ブラノヴォ村のおばあちゃん」を取材しようと、ウドムルト共和国にはさまざまな国のマスコミが押しかけている。70年以上ブラノヴォ村に暮らす彼女たちのユーロビジョンへの参加が決定したことをきっかけに、この地域に注目が集まっているのだ。

ブラノフスキエ・バーブシュキ =Vostock/ロイター通信撮影

ブラノヴォ村の人々は、未だに井戸から水をくんでいる。家の暖房と料理にはペチカを使用しているため、薪をたくさん割って蓄えておく必要がある。つまり、ここに住むには、きつい肉体労働をこなさなければならない。ここ100年、生活様式はほとんど変わっていないのだ。

だからといって、この女性たちに同情する必要はない。この人気の波に乗って、たとえばモスクワなどの、蛇口をひねれば水が出て、薪をくべなくてもよい街に行きたくはないか、と記者がたずねても、彼女たちはそろって首を横にふる。むしろ慢性的な渋滞に悩み、蒸し暑い事務所に座っていなければならないモスクワっ子に同情すら寄せている。

「ブラノヴォ村のおばあちゃん」が有名になったのは、運の良さもあるが、プロデューサーの手腕による部分も大きい。メンバーは2008年、ロシアの伝説的なロック歌手であるヴィクトル・ツォイやボリス・グレベンシコフの曲をウドムルトの民族音楽風にアレンジして歌い、国内で広く知れ渡るようになった。

2010年には「ユーロビジョン」の国内選考会に参加したが、その時は3位という結果であった。今年になって再度挑戦し、見事優勝した。結果に限らず、国内選考会の歴代参加者の中で、ここまで外国人の関心を引いた例はない。

ブラノヴォ村には外国人記者がひっきりなしに訪れ、4月中旬の時点で、すでにアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本、チェコ、ポーランド、フィンランドのマスコミが取材に訪れた。また、国際関係にまで影響を与えている。エストニアの文化相は、自国の国民に対し、本大会で彼女たちに投票するよう呼びかけた。エストニアを含むバルト三国とロシアとの関係がここ20年冷え切っていることを考えれば、この動きが驚くべきものであることがわかる。もっとも、呼びかけにはそれなりの理由がある。ウドムルト語とバルト語派は同じ語族に属しているため、民族同士のつながりがあるようなものなのだ。いかなる理由があるにせよ、ロシアへの投票が呼びかけられたことの意義は大きい。

このように、「ユーロビジョン」に出場する前から、他国との外交関係強化に貢献しているのである。現時点で数カ国での海外公演が予定されており、ロシアのイメージづくりの仕事が続いていくことは間違いない。

なぜこんなに関心が集まったのだろうか。民族色、自然経済、伝統的な衣装は確かに魅力的だが、これだけではないだろう。どこの国にも似たようなエキゾチックさはある。高齢者の女性だからだろうか。現代社会を若さと美が席巻していると考えるのは一般的で、その傾向は否定できない。一方で、先進国はどこも高齢化が急速に進んでいる、または寿命が全体的に伸びているという傾向があり、子供の人口と比較した場合のお年寄りの人口の多さ、いわゆる少子高齢化となっている国が世界で増加している。人口年齢構成がどんどん変化しているのだ。

若く美しい人が成功することは普通だが、70歳以上の人が成功している例はあるだろうか。先進国ではより多くの人々が、この疑問を持ち始めている。医療や美容術の発展、健康的な生活への関心の高まりにより、長生き「しなければならない」のだとすると、どんな生活を送ればよいのか。

「ブラノヴォ村のおばあちゃん」は自分たちの答えをもう見つけている。地元の文化会館で歌い始めたのは何年も前だが、70歳を超えてヨーロッパのショービジネスの頂点に登るなどとは思いもしなかっただろう。人生にこのようなチャンスが生まれたのなら、試さない理由はない。彼女たちにはソ連時代に壊された地元の教会を建て直すという夢があり、それが背中を押している。出演料の一部は修復代に向けられている。今後10年くらいは、ペチカの前で座っている暇などないだろう。