グリーンな生活への転換

モスクワで環境意識向上を呼び掛けるプロジェクトが好調 =イワン・アファナシエフ撮影

モスクワで環境意識向上を呼び掛けるプロジェクトが好調 =イワン・アファナシエフ撮影

 とにかく緑だ。スニーカー、ジャケット、携帯電話、モペッド、何もかもが緑一色。それが、私が初めて32歳の「緑の革新者」ロマン・サブリン氏に会った際の第一印象だった。彼が緑色を愛し始めたのは離婚後のことだ。もしかすると、緑は期待を表す色であるため、サブリン氏自身が丁度それを必要としていたからなのかもしれない。当時彼は建設会社で、朝9時から夕方5時までの高報酬の仕事に就いていたが、それは彼を十分に満足させているとはいえなかった。自分を探していたロマンは、夕刻にオフィスから出ると、パーティーやクラブに繰り出す生活をおくっていた。しかし、それも彼を長いこと満足させることはできなかった。

 ロマンが真に求めていたのは、世界、そして彼の環境を変えることだった。先ず彼は美術から始めた。彼が自ら「アート・アパート」と名付けて新たに立ち上げたフラットシェアは、同じ目的を持った同志たちが赤ワイン、ウォッカやたばこを持ち合い、一堂に会してより良い世界の理想について語り合う場だった。

 数ヶ月の間にたまった多数のワインの空き瓶を、ロマンは二重窓の間に積み重ね始めた。ロシアにはガラス専用リサイクルボックスがなく、そのことを彼は腹立たしく感じていた。ロマンがよりグリーンな生活について思慮し始めたのは、ちょうどその頃だった。 

ピャトニスカヤ通りの「エコ・ロフト

 その後、ロマンはクレムリンに近いピャトニスカヤ通りのアパートに引っ越した。1901年築のこの古い建物内で、彼は「エコ・ロフト」という事業を創始した。さらに2010年の夏には、彼は4人の友人と共に、広々とした5部屋のアパートへ引っ越した。

 何十年の間に幾層にもわたって貼られた壁紙をはがし、明るく、環境にも優しいエコ塗料でペンキ塗りした。隣り合う壁には、「エコ・ロフト」のインターネットアドレスが大きな文字で書かれている。テーブルの上には、環境に優しく生活することなどほとんど不可能なモスクワという都市で、その方法を学びたいという訪問者のために、案内のパンフレットが用意されている。

 ロフトのグランドオープニング前に、居住者全員が頭髪を剃った。シャンプーを使用しないことで、水の消費も抑えられた。そして、どこでも見かけるビニール製バッグに対する抗議として、複数の布製のバッグが廊下に吊された。ロフトの居住者は、モスクワ市内のどこでプラスチック、紙や空瓶をリサイクルできるか、その場所を突きとめた後、自分たちのゴミの分類を始めた。

 ロマンはようやく人生の使命を見出し、それが開花し始めたのだ。現在の彼は、やぎひげをはやし、流行の四角いリムの眼鏡をかけ(もちろん緑色だ)、スマートな雰囲気を醸し出している。アルコール摂取も、肉食も、不要なエネルギー消費もしない。だが、その代わりに、環境に対する深いかかわりと、モスクワ市民の思考パターンを変えさせようという希望を持つ。

健康的な生活についての教育 

 ロマン・サブリンは、自身のロフトを、困難な状況下でも環境保護が可能であることを若者たちに示すための「教育プロジェクト」として位置づけている。

 毎週木曜日の夜、環境の専門家、研究者や運動家を招いた一般公開の「エコ・セミナー」を開催している。ピャトニスカヤ通りの彼のリビングルームの最大収容人数は70名だが、100人を超える人たちが毎週木曜日に押し寄せる。この部屋は全員を収容するにはもはや小さすぎる。

 ロマンは今やちょっとした有名人だ。「エコ・ロフト」は、ロシアのあらゆる主要メディアからの取材を受けている。多くの人が自分の目でこの実験を確かめてみたいと感じている。そしてロマンは、布地のバッグやゴミ箱の解説しながら、アパートのツアーを訪問者一人一人に対して行っている。

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 人々は彼の話に耳を傾ける。彼がスーツとネクタイと共に高報酬の職を後にし、環境のための活動に完全に専念することになった過程を説明すると、彼らの瞳孔は興奮して大きく開く。現在彼は、フリーランサーとして副収入を稼いでいる。

 5月には地方で新たな「エコハウス」プロジェクトを開始した。モスクワ郊外の村にあるこの「エコハウス」では、一軒家に大きな庭、太陽エネルギー、菜食の食事、ヨガ等々、生態的に配慮した生活が凝縮されている。あらゆる分野から集まった12人の若い運動家たちが、そこでの集団生活を計画中だ。最大100人まで泊めることができるこの家の扉は、常に開かれている。ゲストはエネルギー効率について学習しながら、この「エコハウス」に1週間滞在することができる。ロマンは依然としてスポンサー探しに追われているが、見通しは明るい。 

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