=AFP/East News撮影
西側諸国はつい最近まで、BRICSが独立した地政学的集合体になるということに懐疑的だった。BRICSの国家間に統一性がないからだ。
グローバル経済・マネージメントの専門家として有名な黄亜生氏が、先のニューデリーで行われた新興5カ国(BRICS)首脳会議の席で、「これは西側諸国が世界の中心になるべきではないという思いを具象化したものに過ぎず、政治圏ではない」と発言したことは、この懐疑的姿勢を如実に表わしている。
BRICSの首脳は、同盟の前に立ちはだかる問題を過小評価しているわけではない。それぞれの国の内部組織や経済状況は大きく異なる。中国とインドの国境問題や、対パキスタン、対チベットなどへの姿勢の違いなど、相互間にある問題を見て見ぬ振りをしているわけではない。中国とロシアは国連総会の対シリア決議案に拒否権を発動したが、インド、ブラジル、南アフリカは賛成に票を投じているなど、国際政治上の立場が異なることも認識している。
昨年、国際通貨基金の専務理事を選任した際、BRICS内の意見調整はうまくいかなかった。現在は世界銀行の総裁の候補者推挙に頭を悩ませている。コペンハーゲン合意の温室効果ガス削減問題についても同様であった。統一を困難にしている要因は他にもまだある。
とはいえ、ニューデリーで行われた首脳会議では、相互の距離が縮まりつつあることが見えてきた。今日、力強い新興国が世界の旧式化した政治と経済の壁にぶつかりながら、それを取り除くべく団結し始めていることは、誰の目にも明らかだ。
「『世界の安定・安全・繁栄に尽力するBRICSパートナーシップ』を共通議題として交わされた議論は、今後の共同発展を目指したパートナーシップの強化や、透明性、結束、相互理解、信頼に基づいた協力関係の拡大に対する、それぞれの役割に反映された」とする「デリー宣言」は、BRICSの力を結集する過程が、共通の利益を追求し、世界を舞台とした共同作業の準備を実施する過程に変わったことを示している。この言葉の裏には、西側諸国が国際政治で見せる「ダブルスタンダード」に対する抵抗が感じられる。
BRICSが掲げる共同作業計画には、次のような項目がある。
- 国連総会におけるBRICS外相の会合
- 「G20」および国際通貨基金・世界銀行総会におけるBRICS財務相・中央銀行総裁、金融機関・税務代表の会合
- BRICS商務相、農務相の会合
- 第二回BRICS保健相会議、BRICS連絡会経済・貿易問題中間会議
- 2013年に開催される第三回BRICS競争政策担当機関会合
- 2012年にインドで開催されるBRICS科学技術会合、第一回BRICS都市化協議会、第二回BRICS姉妹都市・地方政府協力協議会
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西側の金融機関が打ち出している改革にはBRICSの利益が考慮に入れられていないとして、各首脳は一様に強い不満を表明した。西側の金融政策によって受ける損失の補てんを行う独自の開発銀行を創設することや、ドルの代替通貨として、それぞれの国の通貨で相互決済を行うシステムの創設についても合意がなされた。現在、BRICS間取引総額は2300億ドル(約19兆円)だが、すぐに5000億ドル(約40兆円)に達すると見込まれている。ドルを用いない国際取引としては、近年類を見ない強大な金融構造ができあがることになる。
世界政治の問題についても話し合いが行われ、国連安保理代表部の不均衡性について話が及んだ。紛争問題に際し、好ましくない政権の交代や一方に偏った加勢などに国連を利用してはならないとする声明もあり、NATOに警告を発した形となった。
イランとシリア問題についての話し合いでは、ロシアのメドベージェフ大統領が「シリアへの内政干渉を許さず、政府と反体制派の対話の場を与えることが重要だと考えている。軍事行動を唯一の解決策とするのは、もっとも近視眼的で危険な対応だ」と述べた。イランへの攻撃は許されるべきではないという共通の認識が確認された。イランから中国、インド、南アフリカに輸出される原油は、総量の12%から20%を占めていることに絡み、インドのシン首相は「政治的動揺は世界原材料市場を変動させ、商品流通に影響するため、回避しなければならない」との声明を発表し、ブラジルのジルマ大統領もこの発言を支持した。
これに先立ち、イスラエルのネタニヤフ首相がイランの核施設を攻撃すると主張したことを考えると、この国際問題に対して、二つの極端に異なる政策が世界でとられていることが見えてくる。BRICSは西側諸国の代替的存在だ。
当然のことながら、西側諸国もBRICSの動きに注目している。「ワシントン・ポスト」紙は首脳会議を「新時代の始まり」と報じた。BRICSの根本的な利益の共通性は、客観的な現実であり、今後の統一性を定めていく。新しく、より現代的で、公正な世界の構築に向けて提言できるような同盟が生まれつつある。
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